[日本文学][評論、エッセイ、随筆][メモ]鴨長明『方丈記』第二段(第2段)【抜粋】

 すべて、世中のありにくゝ、わが身とすみかとの、はかなくあだなるさま、又、かくのごとし。いはむや、所により、身のほどにしたがひつゝ、心をなやます事は、あげて不可計。
 若、おのれが身、数ならずして、権門のかたはらにをるものは、深くよろこぶ事あれども、大きにたのしむにあたはず。なげき切なるときも、声をあげて泣くことなし。進退やすからず。たちゐにつけて、恐れをのゝくさま、たとへば、雀の鷹の巣に近づけるがごとし。若、貧しくて、富める家のとなりにをるものは、朝夕すぼき姿を恥ぢて、へつらひつゝ出で入る。妻子・僮僕のうらやめるさまを見るにも、福家の人のないがしろなるけしきを聞くにも、心、念々に動きて、時としてやすからず。若、せばき地にをれば、近く炎上ある時、その災をのがるゝ事なし。若、辺地にあれば、往反わづらひ多く、盗賊の難はなはだし。又、いきほいある物は貪欲ふかく、独身なる物は人にかろめらる。財あればおそれ多く、貧ければうらみ切也。人を頼めば、身、他の有なり。人をはぐくめば、心、恩愛につかはる。世にしたがへば、身、くるし。したがはねば、狂せるに似たり。いづれの所をしめて、いかなるわざをしてか、しばしも此の身を宿し、たまゆらも心を休むべき。



【注】
 「すべて、世中のありにくゝ、わが身とすみかとの、はかなくあだなるさま、又、かくのごとし」:そもそも世の中に暮らしにくく、わが身と住まいのはかなく頼りないことはざっとこのようなものなのだ。
 「所により、身のほどにしたがひつゝ、心をなやます事は、あげて不可計」:「不可計」は「かぞうべからず」と読む。環境により、身分により、心を悩ますことは数え切れない。
 「朝夕すぼき姿を恥ぢて」:「すぼき」はみすぼらしいの意。朝な夕なにおのれの貧乏たらしい姿を恥ずかしく思い。
 「妻子・僮僕のうらやめるさまを見るにも」:「僮僕」<どうぼく>と読む。下僕のこと。女子供や下僕たちが卑屈になっている姿を見るにつけ。
 「福家の人のないがしろなるけしきを聞くにも」:「福家」は権門または富者のこと。<ふけ>または<ふっか>と読むか? 富者の大柄な態度について耳にするさえ。
 「心、念々に動きて」:「念々」は時々刻々の意。心が千々に乱れ動くこと。
 「往反わづらひ多く」:「往反」は<おうばん>と読む。行き来のこと。片田舎に住んでいると都市までの往復が厄介だということ 。
 「財あればおそれ多く、貧ければうらみ切也」:財産のある者は盗られないかとそればかり心配し、貧しい者は不満ばかりが充溢しているのである。
 「人を頼めば、身、他の有なり」:「有」は<う>と発音する。他人を頼みにすると、自分の体もその人のもののようになって、自由にはならず、自己が埋没すること 。
 「人をはぐくめば、心、恩愛につかはる」:他人を愛すると、情愛に束縛されてしまう。
 「たまゆらも心を休むべき」:「たまゆら」は片時もとか、瞬時にも、の意 。


【参考文献】
http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/basho/hojoki/hojoki2.htm

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[日本文学][評論、エッセイ、随筆][メモ]吉田兼好『徒然草』第百三十七段(第137段)【抜粋】

 ある事情があって、吉田兼好『徒然草』第百三十七段を読み取らねばならなかった。訳を読み取っていくと、その季節がすっかり過ぎてしまったことを知る。もう少し早く意味を掴み取っていれば。こういうのを「ニアピン」という。

 花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行衛知らぬも、なほ、あはれに情深し。咲きぬべきほどの梢、散り萎れたる庭などこそ、見所多けれ。歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ」とも、「障る事ありてまからで」なども書けるは、「花を見て」と言へるに劣れる事かは。花の散り、月の傾くを慕ふ習ひはさる事なれど、殊にかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝散りにけり。今は見所なし」などは言ふめる。(以下略)
(吉田兼好『徒然草』第百三十七段)
(吾妻利秋[アクセス日:2005.5.7]、http://www.tsurezuregusa.com/130/137.html


【訳】
 さくらの花は満開の時を、月は影のない満月だけを見るものだろうか? 雨に打たれて雲の向こうの月を恋しく思い、簾をおろして春が終わっていくのを見とどけないとしても、やはり、しみじみと趣深いものだ。こぼれそうな、つぼみの枝や、花が散って花びらがしおれている庭などだって、見る価値はたくさんある。和歌を作ったときの説明書きにも、「お花見にお出かけしたのですが、もう散り去ってしまって」とか「はずせない用事があって、お花見に行けなかったけど」なんて書いてあるのは、「満開の花を見て(作った和歌)」と言っている和歌に負けることがあるだろうか? 花が散り、月が欠けていくのを、切ない気持ちで見つめることは当たり前の心だけど、中には、この気持ちがわからない人がいて「この枝も、あの枝も、花が散ってしまった。もはや、花見はできない」なんていうことを言ったりする。(以下略)
(吾妻[アクセス日:2006.5.7]、一部改)


【参考文献】
吾妻利秋[アクセス日:2006.5.7]「徒然草(吉田兼好著・吾妻利秋訳)」、http://www.tsurezuregusa.com/130/137.html

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