[歴史哲学][歴史と記憶]歴史と記憶――2. 「記憶」が抱えるジレンマ

 本稿では、過去を「記憶」しようとする際に伴う問題点についてまとめることにする。

2.1 「記憶の固執」から生じる排除性
 過去の出来事は、過去の「記憶」を思い出すことによって語られる。太平洋戦争が1945年に終結したことの詳細を語るときには、「太平洋戦争」にまつわる文献や映像を用いてそれを語る。そのとき、太平洋戦争に関する文献や映像は「太平洋戦争」を記録した「記憶」の表示物として存在する。「記憶」は言わば過去の出来事の貯蔵庫として機能することになる。
 「記憶」を用いるためには、それを「語る」ことによって生産することが必要になる。しかし、「記憶」が抱える問題は、それ自身が持つ固執性である。
 「記憶」は過去の出来事に関する記録を表すものだが、それが正しいものとして作用するには正当性が必要だろう。この際の「正当性」とは、「過去の出来事を記録するものとして客観的妥当性を持つものとして認められること」を意味する。正当性を保証された「記憶」は、やがて歴史記述が正しいかどうかを判断する基準として作用する。その際、間違っているとされる歴史記述に関して、その記述から発せられる「記憶」の正当性を認めない。例えば、韓国併合によって苦しめられた人々の経験から生じた「記憶」は、「韓国併合は正しかった」という歴史記述の正当性を認めようとはしないだろう。
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[歴史哲学][歴史と記憶]歴史と記憶――1. 疑問

 最近、RINGで「記憶の共有」に関わる内容で学習会が行われた。主に戦争に関する「記憶」が加害国と被害国でその作られ方や持ち方が異なっており、いかにして共有すればよいのかを模索する内容だった。
 しかし、私は「記憶」が持つ排除機能の問題を危惧している。後に書くつもりだが、「記憶」は過去に起きた出来事を体験者(主観)が感じたままに「記し留め」、後に過去の経験として再生する働きや、また、その内容でもある。さらに、「記憶」は過去のあらゆる出来事から取捨選択をして形成されたものでもある。一度「記憶」された過去は「記憶」の内容の通りに固定化され、「記憶」の内実と異なる歴史的過去の異見を排除する。そこには新たな歴史理論や歴史的弱者の言説が入り込む余地がなくなる。即ち、「記憶」は「記憶」された過去に関する検証の可能性を拒否するように働くのである。(続く)

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[哲学][価値論]寛容論と共生

【脱稿 2003.11.3[Mon.]】

0. 目的
 本稿では、「共生」が目指すものについて、寛容論の議論を手がかりにして考察する。

1. 寛容論とその問題
 寛容とは「本当は認めたくはないが、お互いに干渉しない限りで共存しようとする態度」(1)を言う。即ち、寛容は「寛容でありえない物に対してのみ要求される」(2)のであり、^曚覆觸乎弔存在し、△修譴蕕麓分達と対立するような道徳的・政治的・宗教的信念を持っていて、6Δ棒犬ていくためのとるべき道が全く見当たらない(武器を持って衝突する以外にない)環境の下で寛容が発生する。しかし、自分の考えを持っていながら、相手に寛容になれと要求できるのか、また最初から不寛容なものに寛容を要求できるのかという問題点がある(3)。

2. 文化間主義
 多文化主義はお互いに寛容であることを前提にしている。そのために、多文化主義には相対主義への危険、即ち、グローバル化にマイノリティが呑まれて文化の差異性を失う(メルティングポット)か、各文化間の断絶状態(4)(相互不干渉状態、「サラダボウル」)に陥る危険がある。文化間の断絶状態が続き、お互いに干渉しない状態を採用すればそもそも宗教戦争は起こらない(ジョン・ヒック(5))のである。
 そこで、インターカルチュラリズム(Interculturalism、文化間主義)の概念(自分と他者の立場を持ちながら、相互対話を通じた自己形成、自己変革の作用)により、自己と他者のテリトリーを分離したままの交流ではなく、相互にテリトリーを渡り合うことで、「主流と非主流」的二元論を克服する道が開けるのではないかという微かな思念を持っている。

3. 結語
 共生が目指すものは、自己の立場を確保しつつ、他者(異文化)への関心をもちつづけることであろう。即ち、相手のところへ行ってただ真似をするのではなく、他者の間に入り込み、もまれながらもその差異性を味わいつつ対話することであり、他者を当事者的に捉えられるように自己を非対象化して他者のリアリティ性を高め、自己の内で相互浸透して異文化を受容できるようにするのである(6)。


【注】
(1) 寛容は、「他人や他の集団が、異なる思想や宗教を奉じていたり、異なる習慣の下で生活しているという事実に直面して、道徳的に受け入れられないと判断したり、あるいは不快感や嫌悪感や憎悪が引き起こされる場合に、それにもかかわらず、それらの思想や宗教や習慣に干渉することなく、また自分の思想や宗教や習慣を相手に強制することなく、その他人や他の集団と共存しようとする態度」と定義される(谷本光男「寛容――自由な社会を保障するもの――」〔加茂直樹編[2001]『社会哲学を学ぶ人のために』、世界思想社〕、111-112頁)。
(2) 谷本、前掲書、112頁。
(3) 寛容論の問題点
ー分の考えを持ちながら、不寛容を道徳的否認だと要求することが出来るのか。また寛容と無関心との区別が曖昧である。
不寛容なものに対して寛容を求めることは可能なのか(ジョン・ロック『寛容についての書簡』〔レイモンド・クリパンスキー序、平野耿訳[1971]、朝日出版社〕を参照。ここでは国家・教会の寛容について説かれている)。
B昭圓紡个垢詬淦の根拠⇒間違ったとみなす行為や信念は自身の選択による。不寛容が道徳的に不正となる理由⇒対象となりうる者の自律を尊重しないこと(谷本、前掲書、113-118頁)。
(4) ケベック州の場合、伝統文化優遇政策によりマイノリティ化した人々が存在する。よってインターカルチュラリズムへ流れた(山本伸「グローバリズムからインターカルチュラリズムへ」〔片岡幸彦編[2001]『地球村の思想――グローバリゼーションから真の世界化へ――』、新評論〕)、321-323頁。例として、アフガニスタンのトライバル・エリアが挙げられる。エリア内では各集団の長が仕切っており、各エリア間内での交流は少ない。
(5) 両角英郎「現代世界と宗教の役割」(片岡、前掲書)、271-273頁。
(6) これは、各文化間の差異性を保持しつつ、他者への同質化を拒否することに他ならないだろう。

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