[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]57. 現代の諸課題と倫理(6)人類の福祉

57. 現代の諸課題と倫理(6)人類の福祉
【テーマ】人類の福祉をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?
A:「☆福祉(welfare/well-being)」に対する関心
(1)☆ロールズ…☆「公正としての正義(justice as fairness)」
☆正義の二原理:以下の二つのことを満たさなければ、正義とは言えない(=不正)。
●第一原理 各人は基本的な自由の最も広い体系の対する平等な権利を持つべきであるが、このような自由の体系は他者の同様の体系と両立しなくてはならない(=平等な自由の原理)。
●第二原理 社会的・経済的不平等は次の二つの条件を満たしていなければならない。
(a)機会の公正な均等という条件の下で全員に開かれている公職や地位に伴うこと(=機会の公正な均等原理)。
(b)社会の最も恵まれない人の状況を改善すること(=格差原理)。
⇒☆基本財(基本善;the primary goods)の分配の正義を説く。
(2)☆セン…☆ケイパビリティ(capablity;潜在能力:各人がよりよい生を自ら選べる自由)の開発と発展(=財や所得が人々にどのような選択の自由をもたらすか)という観点から福祉を考える。
☆ノーマライゼーション(normalization):誰もがどのような状況でも不便を感じない生活を送ることが普通である社会。誰もが共生できるような社会がノーマル(正常)。

B:人類の福祉
☆政府開発援助(ODA;Official Development Organization)
☆非政府組織(NGO;Non-Governmental Organization)
⇒より民間レベルでの協力が国家や国際組織と連携して行うことがより大切!!

C:差別の構造と偏見の心理
☆ステレオタイプ(stereotype):決まりきった型や観念のイメージ。
☆オルポート…「☆過度の一般化」:偏見の心理の一つ。個別的事例から即座に全体像を否定的に見る傾向。

【参考文献・参考URL】
安彦一恵・谷本光男編(2004)『公共性の哲学を学ぶひとのために』世界思想社.
山脇直司(2004)『公共哲学とは何か』、ちくま新書.
山脇直司(2009)『社会思想史を学ぶ』、ちくま新書.
小川仁志(2010)『はじめての政治哲学――「正しさ」をめぐる23の問い』、講談社現代新書.
川本隆史(1997)『現代思想の冒険者たち 23 ロールズ――正義の原理』、講談社.
ロールズ著、川本隆史・福間聡・神島裕子訳(2010)『正義論』、紀伊国屋書店(改訂版).
大川正彦(1999)『思考のフロンティア 正義』、岩波書店.
川本隆史(1997)『現代思想の冒険者たち 23 ロールズ――正義の原理』、講談社.
川本隆史(2005)『現代思想の冒険者たちselect ロールズ――正義の原理』、講談社.
アマルティア=セン著、池本幸夫ほか訳(1999)『不平等の再検討――潜在能力と自由』、岩波書店.
アマルティア=セン著、黒崎卓・山崎幸治訳(2000)『貧困と飢餓』、岩波書店.
アマルティア=セン著、大石りら訳(2002)『貧困の克服――アジア発展の鍵は何か』、集英社新書.
飯島昇蔵(2001)『社会科学の理論とモデル 10 社会契約』、東京大学出版会.
姜尚中(2001)『思考のフロンティア ナショナリズム』、岩波書店.
姜尚中(2006)『愛国の作法』、朝日新書.
小林和之(2004)『「おろかもの」の正義論』、ちくま新書.
齋藤純一(2000)『思考のフロンティア 公共性』、岩波書店.
齋藤純一(2005)『思考のフロンティア 自由』、岩波書店.
千葉眞(2000)『思考のフロンティア デモクラシー』、岩波書店.
仲正昌樹(2003)『不自由論――何でも「自己決定」の限界』、ちくま新書.
仲正昌樹(2009)『今こそアーレントを読み直す』、講談社現代新書.
マイケル=サンデル著、鬼澤忍訳(2010)『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』、早川書房.
宮崎哲弥(2010.7.21[水])「サンデルの問い 現実を「私たち」から考える」、朝日新聞.
森村進(2001)『自由はどこまで可能か――リバタリアニズム入門』、講談社現代新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]56. 現代の諸課題と倫理(5)異文化理解

56. 現代の諸課題と倫理(5)異文化理解
【テーマ】異文化理解をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?
A:社会の国際化(☆グローバリゼーション)をめぐって…
☆多言語・多民族国家:国内に複数の言語と民族を抱える国家。
●グローバリゼーション⇒☆多文化状況
☆異文化理解…民族間の対立や紛争を解決し、☆共生できるための努力の第一歩。

B:自民族中心主義の克服のために
☆自民族中心主義(ethnocentrism;エスノセントリズム):自文化の価値観を無意識のうちに絶対視し、その自己中心的な尺度で異文化をとらえる見方。
☆同化主義:多数派の支配的文化の中に少数派を同化・吸収しようとする考え。
☆サイード『オリエンタリズム』…「オリエンタリズム(西洋近代社会から見た、アジアや中東への誤解や偏見に基づく理解)」批判。
☆文化相対主義:異なる文化はそれぞれに固有の意味や価値を持つものであり、相互に優劣や善悪の関係はないとする考え。
☆多文化主義(multiculturalism;文化多元主義):文化の違いを積極的に認め、互いに尊重し合おうとする立場。一つの社会に複数の文化が対等な関係で共存すること。

【参考文献・参考URL】
エドワード=W=サイード著、今沢紀子訳(1993)『オリエンタリズム〈上・下〉』、平凡社ライブラリー.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子・早尾貴紀訳(2002)『戦争とプロパガンダ』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2002)『戦争とプロパガンダ2――パレスチナは、いま』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2003)『イスラエル、イラク、アメリカ――戦争とプロパガンダ3』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2003)『裏切られた民主主義――戦争とプロパガンダ4』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2005)『オスロからイラクへ――戦争とプロパガンダ2000-2003』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、島弘之訳(2003)『パレスチナとは何か』、岩波現代文庫.
加藤尚武(2003)『戦争倫理学』、ちくま新書.
塚原史(2000)『人間はなぜ非人間的になれるのか』、ちくま新書.
藤原帰一(2001)『戦争を記憶する――広島・ホロコーストと現在』、講談社現代新書.
岡真理(2000)『思考のフロンティア 記憶/物語』、岩波書店.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]55. 現代の諸課題と倫理(4)情報化社会

55. 現代の諸課題と倫理(4)情報化社会
【テーマ】情報化社会をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?
A:☆情報化社会(高度情報化社会[情報社会]):情報の価値が高まり重視され、ものの生産以上に重視されるような社会。
【背景】
〇唆箸両霾鷁宗栂通・販売・管理などあらゆる産業分野でコンピュータが導入。
⊂霾鵑了唆伐宗帖マスメディアをはじめ、高い付加価値を持つ情報産業が発達。
生活の情報化…マスメディアや☆インターネットの発達で地球上の出来事がすぐに届く。

○マスメディア→報道・教育・世論形成に影響。
☆IT(Information Technology;情報技術)革命…パソコン・携帯電話などで、インターネットを経由して、大量の情報(文字、画像、音声、映像)を発信、記録、統合、処理できるようになった⇒即座に情報発信・情報収集が地球規模で可能に。
⇒☆マルチメディア環境の整備

●具体的には…社会生活・産業の変化
○インターネット
○電子メール
○電子商取引(Eコマース)
○オンライン=ショッピング
○オンライン=バンキング
○ネット=オークション

B:情報化社会の問題点
仝両磴砲茲襯僖縫奪、ハイテク犯罪、情報流出
機器への不適応、☆ヴァーチャル=リアリティ(仮想現実)の現実視。
C療財産権の侵害…不法コピーの流通
ぞ霾鸛犧遏◆プライバシーの侵害など…☆管理社会化

C:情報化社会の課題
◎2003 ☆個人情報保護法制定→適切な運用が課題。
☆情報公開制度→☆「知る権利」の確立・拡充へ
☆情報リテラシー:真実で正確な情報を見極める情報判断能力や情報についての批判的理解力。
☆デジタル=ディバイド:情報機器を使える人と使えない人との間に起こる格差。

【参考文献・参考URL】
東浩紀(2001)『動物化するポストモダン』、講談社現代新書.
東浩紀(2007)『ゲーム的リアリズムの誕生――動物化するポストモダン(2)』、講談社現代新書.
東浩紀(2007)『情報環境論集――東浩紀コレクションS』、講談社[講談社BOX].
東浩紀・北田暁大編(2008)『思想地図 vol.1 特集 日本』、NHKブックス別冊.
東浩紀・北田暁大編(2008)『思想地図 vol.2 特集 ジェネレーション』、NHKブックス別冊.
東浩紀・北田暁大編(2009)『思想地図 vol.3 特集 アーキテクチャ』、NHKブックス別冊.
東浩紀・北田暁大編、宇野常寛編集協力(2009)『思想地図 vol.4 特集 想像力』、NHKブックス別冊.
東浩紀・北田暁大編(2010)『思想地図 vol.5 特集 社会の批評』、NHKブックス別冊.
東浩紀・濱野智史編(2010)『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』、河辺書房新社.
東浩紀・濱野智史編(2010)『ised 情報社会の倫理と設計 設計篇』、河辺書房新社.
宇野常寛(2008)『ゼロ年代の想像力』、早川書房.
荻上チキ(2007)『ウェブ炎上――ネット群集の暴走と可能性』、ちくま新書.
荻上チキ(2008)『ネットいじめ』、PHP新書.
荻上チキ(2009)『社会的な身体――振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』、講談社現代新書.
白倉伸一郎(2004)『ヒーローと正義』、子どもの未来社(寺子屋新書).
鈴木謙介(2005)『カーニヴァル化する社会』、講談社現代新書.
鈴木謙介(2007)『ウェブ社会の思想――<遍在する私>をどう生きるか』、NHKブックス.
前島賢(2010)『セカイ系とは何か――ポスト・エヴァのオタク史』、ソフトバンク新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]54. 現代の諸課題と倫理(3)家族と地域社会

54. 現代の諸課題と倫理(3)家族と地域社会
【テーマ】家族と地域社会をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?
A:「家族」の形態・機能の変化
◎1955-1973 高度経済成長
…☆拡大家族⇒急速に☆核家族化へ
☆核家族:夫婦と未婚の子どもからなる家族。アメリカの文化人類学者マードックが定式化した概念。経済的・生殖的・教育的機能を果たしていくための最小単位。
【背景】
○日本国憲法(…個人の尊厳と両性の本質的平等)、産業構造の変化
⇒☆都市化…都市の過密化、地方の過疎化・高齢化
⇒都市部で急速に核家族化⇒小家族化、☆少子化

☆第一次集団(基礎集団):自然な情愛で結ばれた、社会の最も基礎的な集団。家族・村落・民族など。
▲機能集団:特定の目的や機能を果たすために作られた集団。学校・企業・政党など。

●「家族」の機能
〇劼匹發鰺椣蕕靴動貎輿阿砲垢襦福社会化の機能)
快適な生活環境(☆アメニティ)を基に成員の☆パーソナリティに安定を与える機能。
⇒☆家族機能の外部化:家族本来の機能が外部の社会集団に依存する状況。教育→学校、福祉→老人介護施設など

B:現代家族の問題
○女性の社会進出
☆出生率・婚姻率の低下
○結婚年齢の上昇
○男女共働き
☆育児…育児ノイローゼ、☆子どもの虐待など課題
◎1986 ☆男女雇用機会均等法施行
◎1999 ☆育児・介護休業法施行
◎1999 ☆男女共同参画社会法制定
⇒☆ジェンダー(gender:社会的性差)による差別解消への制度改革

C:高齢社会と家族
☆高齢化社会(aging society):65歳以上の高齢者の割合が総人口の7%を超えた社会。日本は1970年から突入。
☆高齢社会(aged society):65歳以上の高齢者の割合が総人口の14%を超えた社会。日本は1994年から突入。

●高齢者をめぐる問題
〃从冖簑蝓沈験莇譟幣ない年金)、就職難、生産年齢層の負担増
健康問題…病気、死など精神的不安、単独世帯の増加…孤独死、介護者の負担…老老介護・介護殺人・介護自殺
◎2000 ☆介護保険制度発足→体制不十分
…特別養護老人ホーム入居待ち、介護助成不十分、介護従事者の低賃金など
☆ノーマライゼーション(normalization):誰もがどのような状況でも不便を感じない生活を送ることが普通である社会。誰もが共生できるような社会がノーマル(正常)。
◎2003 改正ハートビル法施行→建物のバリアフリー化の徹底へ
生きがいの問題…孤独、老年期の人生設計や☆生涯学習の充実の課題

【参考文献・参考URL】
加藤尚武(1994)『応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(1996)『現代を読み解く倫理学――応用倫理学のすすめ供戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2000)『子育ての倫理学――少年犯罪の深層から考える』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(2002)『合意形成とルールの倫理学――応用倫理学のすすめ掘戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2009)『現代社会の倫理を考える 16 合意形成の倫理学』、丸善ライブラリー.
宮台真司(2009)『日本の難点』、幻冬舎新書.
広井良典(1997)『ケアを問い直す』、ちくま新書.
広井良典(2001)『死生観を問い直す』、ちくま新書.
広井良典(2009)『コミュニティを問いなおす――つながり・都市・日本社会の未来』、ちくま新書.
藤森克彦(2010)『単身急増社会の衝撃』、日本経済新聞出版社.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]53. 現代の諸課題と倫理(2)環境倫理

53. 現代の諸課題と倫理(2)環境倫理
【テーマ】環境をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?
A:環境問題への警告
▲公害問題
☆環境権:良好な環境を享受する権利。憲法第25条[生存権]・第13条[幸福追求権、人格権]が根拠。←大阪空港公害訴訟…環境権認めず、騒音等が人格権侵害と認める(◎1975 大阪地裁)…◎1981 最高裁で原告側請求棄却

▲1950〜1960年代 公害問題
☆公害:「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう」(環境基本法第2条)→☆典型7公害
☆四大公害訴訟(‐評、発生地域、主な原因、と鏐陝↓チ幣戮侶舒沺
┣☆四日市ぜんそく
┃├ゝご瓢抉蝓τ誕→肺気腫→死亡。
┃├∋綾展四日市市。
┃├9場からの亜硫酸ガス(硫黄・窒素酸化物)。
┃├ぞ赦損容市石油など6社。
┃└1967.9提訴、1972.7原告勝訴。
┣☆イタイイタイ病
┃├〜歓塙折→死亡。
┃├富山県神通川流域。
┃├9杙確出からのカドミウム。
┃├せ旭羔眤姐朸函
┃└1968.3第一次提訴、1973.8原告勝訴。
┣☆新潟水俣病
┃├ゝ介類を食べて中枢神経侵される→めまい・しびれ→死亡。
┃├⊃軍禪阿賀野川流域。
┃├9場排水の中の有機水銀。
┃├ぞ赦妥店。
┃└1967.6第一次提訴、1971.9原告勝訴。
┗☆新潟水俣病
 ├ゝ介類を食べて中枢神経侵される→めまい・しびれ→死亡。
 ├熊本県水俣市。
 ├9場排水の中の有機水銀。
 ├ぅ船奪宗
 └1969.6第一次提訴、1973.3原告勝訴。
◎1967 ☆公害対策基本法制定。
◎1971 ☆環境庁発足。

▲公害対策への責任
├☆無過失責任制度:過失の有無と無関係に被害発生時に賠償責任を負う。
├☆汚染者負担の原則(PPP;Polluter Pays Principle)
└☆総量規制:有害排出の総量で規制。濃度ではない。

◎1962 ☆レイチェル=カーソン『沈黙の春』発行。
…有機性塩素農薬や殺虫剤使用の危険性を告発。
◎1960年代 ☆「宇宙船地球号」(アメリカの経済学者ボールディングが提唱)が一般化。

B:環境問題の現象
(1)☆生態系(エコシステム)の悪化
☆生態系:一定の地域内の生物群と、それを取り巻く環境のこと。食物連鎖(生産者[植物]‐消費者[草食動物・肉食動物]‐分解者[微生物])のバランスにより維持されている。
(2)生物種の減少
○生物の相互依存・影響で存立する地球から特定の生物や植物が絶滅
(3)資源の枯渇
○石油・石炭(地下資源)、森林資源、海洋資源の減少
(4)廃棄物の累積
○産業活動や家庭生活のゴミや排水などが自然環境の中に蓄積

C:環境問題の種類と原因
☆砂漠化←森林伐採、焼畑農業、地下水のくみ上げなど。
☆地球温暖化←化石燃料消費などで、二酸化炭素などの☆温室効果ガス排出量増大。
☆オゾン層の破壊←☆フロンガスの使用…オゾン層破壊し、紫外線量増加…皮膚ガン・白内障
☆酸性雨←工場の排煙、車の排気ガスの窒素酸化物や硫黄酸化物が太陽光と化学変化し硝酸や硫酸に…大気中の水蒸気と混じり、雨と一緒に降り注ぐ。
○化学物質、開発、外来種の輸入など→生態系の悪化
☆コルボーン『奪われし未来』で☆環境ホルモン(内分泌撹乱物質)の悪影響を警告。
☆環境ホルモン(内分泌撹乱物質)→性ホルモンの働きに異常→生殖異常
…ダイオキシン、DDT、PCB、有機スズ化合物など

D:☆環境倫理(environmental ethics)の主張
(1)環境問題の倫理的側面
●人間が関わる生産・消費・廃棄の活動が他者(現役世代、他の生物や生態系、未来世代)に与える影響をどう考えるか。
(2)☆環境倫理(environmental ethics)の主張
 地球の有限性:有限な生態系で構成される地球では、全ての活動が必ず他者へ影響を及ぼすため、一定の倫理的規定が必要である。
◆自然の生存権:人間だけではなく、自然も生存の権利を持つ。
☆世代間倫理:地球環境の悪化は現役世代だけではなく未来世代にも影響を及ぼすので、現役世代は未来世代の生存可能性に対しても責任を持つ。

D:環境問題への取り組み
(1)国際的な取り組み
◎1972 ☆国連人間環境会議(ストックホルム)=環境問題についての初の国際会議。
…☆「かけがえのない地球(only one earth)」をスローガンに、人間環境宣言を採択。
…☆ローマクラブ「成長の限界」…人口増加と経済成長の減速を主張。
▲対立点
├先進国…環境保護のため、途上国は経済活動の抑制せよ!
└発展途上国…貧困克服のため、自国の経済発展が先だ!
◎1992 ☆国連環境開発会議(地球サミット)(リオデジャネイロ)
…☆「持続可能な開発」を理念に「リオ宣言」や☆気候変動枠組み条約(→CO2排出量抑制)、生物多様性条約などを採択⇒行動計画として☆「アジェンダ21」を採択。
◎1997 ☆地球温暖化防止京都会議⇒☆京都議定書を採択(2005年に発効)
…2012年までに、温室効果ガスを先進国全体で5.2%(米国7%、EU8%、日本6%)を削減目標。
…中国、インド、発展途上国に削減義務なし。◎2001 アメリカが離脱。
▲対立点(_梗叱果ガスの削減方法、∋餠皹臀、2甲伐祝瓢澆竜蚕儕臀)
┣アメリカ(…先進国)
┃├“展途上国も費用自己負担で、温室効果ガスの削減に努力すべきだ。
┃├国民総生産の0.7%が限度だ。
┃└L欺の技術援助はありえない。有料なら認める。
┗中国・インド(…発展途上国)
 ├_甲伐修藁鮖謀に先進国の責任。先進国がまず排出削減すべきだ。
 ├国民総生産の0.7%すら守っていない。さらなる増額を。
 └L欺で、温暖化防止の技術援助が欲しい←途上国の累積債務問題

▲環境問題への国際的取り組みの続き…。
◎2002 ☆環境開発サミット(ヨハネスブルク)
◎2009 第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)〔コペンハーゲン(デンマーク)〕
→「コペンハーゲン合意」採択。
├2012年期限切れの京都議定書延長について継続協議。
└∧董γ羇泙猩帆箸澆料甦策定を目指す。
◎2010.11.29(日本時間2010.11.30未明) 第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)〔カンクン(メキシコ)〕
…2013年以降の地球温暖化対策(ポスト京都議定書)を議論。
→「カンクン合意」採択。
├(董γ罎覆票舁彷喀亶颪加わる新たな温暖化対策の枠組み「ポスト京都議定書」の早期策定を目指す。
├∋唆罰很秦阿らの気温上昇を2度未満に抑える。
├2甲伐修農犬犬詒鏗欧悗梁从を進める「カンクン適応枠組み」を設立。
├た袈宗ε咯綛颪2020年に何も対策をとらないときと比べ温暖化ガス排出量を減らす。
└ヅ咯綛饂抉腓悒哀蝓璽鶺じ基金を設立。
⇒2012年期限切れの京都議定書後の枠組みはどうなる?

(2)日本国内での取り組み
◎1976 環境アセスメント条例(神奈川県川崎市が初)
◎1993 ☆環境基本法制定…都市・生活型公害や地球環境問題への対策をカバー。
◎1995 容器包装リサイクル法制定。
◎1997 ☆環境影響評価法(環境アセスメント法)制定。
◎1998 家電リサイクル法制定。
◎1999 ダイオキシン類対策特別措置法制定。
…☆環境ホルモン(内分泌撹乱物質)の一種☆ダイオキシンへの対策。
◎2000 ☆循環型社会形成推進基本法制定→容器包装リサイクル法完全実施、家電リサイクル法(◎2001実施)、リサイクル法、廃棄物処理法、建設資材リサイクル法、食品リサイクル法、クリーン購入法など。
◎2001 ☆環境省設置。

●環境問題の立場の違い
┣環境保護を優先する立場=将来に残すべき幸福や利益を追求。
┗経済活動を優先する立場=現在の幸福や利益を追求。

☆エコビジネス:環境悪化を防ぐための商品や技術開発などを進める企業活動。
☆グリーン=コンジューマー:環境問題に配慮した商品・サービスを求める消費者。
☆ナショナルトラスト運動:無秩序な開発から環境を守るため、国民から募金を募り土地を買い、または寄贈を受けて土地を管理・保存する運動。
☆「地球規模で考え、足もとから行動する(think globally, act locally)」

【参考文献・参考URL】
加藤尚武(1994)『応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(1996)『現代を読み解く倫理学――応用倫理学のすすめ供戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2000)『子育ての倫理学――少年犯罪の深層から考える』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(2002)『合意形成とルールの倫理学――応用倫理学のすすめ掘戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2009)『現代社会の倫理を考える 16 合意形成の倫理学』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(1991)『環境倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(2005)『環境と倫理』、有斐閣アルマ.
加藤尚武(2005)『新・環境倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
鬼頭秀一(1996)『自然保護を問いなおす――環境倫理とネットワーク』、ちくま新書.
戸田清(1994)『環境的公正を求めて――環境破壊の構造とエリート主義』、新曜社
松野弘(2009)『環境思想とは何か――環境主義からエコロジズムへ』、ちくま新書.
諸富徹(2003)『思考のフロンティア 環境』、岩波書店.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]52. 現代の諸課題と倫理(1)生命倫理

52. 現代の諸課題と倫理(1)生命倫理
【テーマ】生命をめぐる倫理的な問題とは何か?また、どのように考えるべきか?

A:☆バイオテクノロジー(biotechnology;生命工学)の発達→従来不可能であった生・死へ人為的な操作・介入が可能に(=倫理的問題)⇒☆生命倫理(bioethics;バイオエシックス)の要請=人間の生死や生命の捉え方などの新たな基準・原理を求める。

B:主なトピックス
(1)生をめぐる問題
☆クローン技術…◎1997 クローン羊ドリー誕生(英)
…日本では、ヒトクローン技術規制法(2001年制定)でヒトクローン胚を母体へ入れる行為を禁止。
☆ES細胞(胚性幹細胞):皮膚や骨などの組織や臓器に成長する可能性を持つ万能細胞。受精卵を使っている。
 ▲iPS細胞:人工多能性幹細胞のこと。皮膚などの体細胞から万能細胞を作り出すことができる。
◎2003 ☆ヒトゲノム(ヒトの生存に必要な最小限度の染色体の一組に含まれる全遺伝情報)解析完了…☆遺伝子治療、☆出生前診断への期待
⇒個人情報解析、スクリーニングなどの問題
 ▲着床前診断:受精卵が着床する前に解析・検査を行う←異常性ある受精卵の排除へ

☆人工授精:人工的に精子を取り出し、子宮の中に注入する。
☆体外受精:体外で精子と卵子を受精させ、その受精卵を母体の子宮の中に戻す。
☆代理出産:体外受精した受精卵を第三者(⇒☆代理母)の子宮を借りて出産⇒☆代理母との間の親権・養育権などの問題…「出産」ビジネス
 …日本では代理出産を認めていない。

(2)死をめぐる問題
●死の三兆項=心臓の停止、呼吸の停止、瞳孔の拡散。
☆脳死:大脳半球および脳幹の不可逆的な機能停止のこと。全脳死のこと。
 ☆ドナー:臓器提供者。
 ☆レシピエント:臓器提供を受ける人。
◎1992 脳死臨調…脳死移植をするときのみに脳死判定を行い、その時に「脳死は人の死」を基準にする。
◎1997 ☆臓器移植法成立
◎2009 ☆臓器移植法改正
├^賣Г法崘昌爐録佑了燹廖
├∨椰佑琉媚廚不明でも、脳死判定を認める。
└K椰佑琉媚廚不明でも、遺族の承諾により臓器が摘出できる。

(3)☆自己決定権をめぐって…
☆パターナリズム:医者が患者の最善と思われる治療方法を決めるように、当事者以外の者が意思決定を行うこと。権威主義。
☆インフォームド=コンセント(informed consent):十分な説明に基づく合意。
☆リヴィング=ウィル(living will):生前に自分の死に関する意思を表示すること。
☆臓器移植決定意思表示カード(ドナーカード):臓器提供の意思を表示するカード。

☆生命の質(生活の質;QOL;quality of life):自分らしく生きることに絶対的価値を置く。
☆生命の尊厳(SOL;sanctity of life):生命・生きることに絶対的価値を置く。
☆自然死:一般的に迎える死。
☆安楽死:患者になるべく苦痛を与えずに迎えさせる死。医者が行う患者への死。
☆尊厳死:一人の人間としての人格や尊厳を尊重させる死←医療機器に繋がれた延命措置による苦痛ある生を拒否。
☆ホスピス=ケア:末期患者に行われる、病気の治療よりも精神的ケアを中心とした医療。

●治療(cure)より介護(care)

【参考文献・参考URL】
加藤尚武(1994)『応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(1996)『現代を読み解く倫理学――応用倫理学のすすめ供戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2000)『子育ての倫理学――少年犯罪の深層から考える』、丸善ライブラリー.
加藤尚武(2002)『合意形成とルールの倫理学――応用倫理学のすすめ掘戞丸善ライブラリー.
加藤尚武(2009)『現代社会の倫理を考える 16 合意形成の倫理学』、丸善ライブラリー.
宇都宮直子(2005)『「死」を子どもたちに教える』、中公新書ラクレ.
小泉義之(2006)『病いの哲学』、ちくま新書.
関口雄祐(2010)『イルカを食べちゃダメですか?――科学者の追い込み漁体験記』、光文社新書.
難波紘二(2004)『覚悟としての死生学』、文春新書.
広井良典(2001)『死生観を問いなおす』、ちくま新書.
福本博文(2002)『リビング・ウィルと尊厳死』、集英社新書.
森岡正博(1994)『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』、ちくま新書.
森岡正博(2003)『無痛文明論』、トランスビュー.
山折哲雄・島田裕巳(2008)『日本人の「死」はどこにいったのか』、朝日新書.
米本昌平(2006)『バイオポリティクス――人体を管理するとはどういうことか』、中公新書.
鷲田清一(2004)『教養としての「死」を考える』、洋泉社新書y.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]51. 近代日本思想(5)日本の近代哲学の誕生

51. 近代日本思想(5)日本の近代哲学の誕生
【テーマ】西田幾多郎や和辻哲郎は西洋近代哲学の手法から何を導いたのか?

A:☆西田幾多郎(1870-1945):京大教授。主著『善の研究』。
 純粋経験:知情意の分離や主客未分(主観と客観が分かれる以前)の直接的で具体的な根本の経験。純粋経験=〈我(…主観)‐もの(…客観)〉の統一
⇒●禅体験(東洋思想)を基盤に、自我を中心とする西洋哲学を超えるものとして捉える。
●「個人あって経験あるのではなく、経験あって個人あるのである」
◆善=人格の実現…純粋経験を成り立たしめている統一の働きと自己が一体になり、真善美を創造すること。
☆絶対無:有の否定としての無(=相対的無)ではなく、相対的な有無を超え、一切の存在物の根拠。

B:☆和辻哲郎(1889-1960):倫理学者。東大教授。主著『人間の学としての倫理学』『倫理学』『風土』。
/祐屐帖間柄的存在:人と人との関係(間柄)においてのみ人間たりえる。
⇒人間は社会的存在
⇔冤:個人と社会相互の働きのあるべき形…間柄において成立
⇔西洋近代思想「倫理」…個人と社会をそれぞれ独立した存在とみなす←和辻「一面的すぎる」
8朕諭勅己を自覚し、社会に投げ入れ、自己を社会に重ね合わせる。

●西田・和辻…日本思想を西洋近代思想の手法で捉えなおす。

【参考文献・参考URL】
西田幾多郎(1991)『善の研究』、ワイド版岩波文庫.
上田閑照編(1988)『西田幾多郎哲学論集 供宗熟斥と生命 他四篇』、岩波文庫.
檜垣立哉(2005)『西田幾多郎の生命哲学――ベルクソン、ドゥルーズと響き合う思考』、講談社現代新書.
藤田正勝(2007)『西田幾多郎――生きることと哲学』、岩波新書.
和辻哲郎(2007)『人間の学としての倫理学』、岩波文庫.
和辻哲郎(1979)『風土』、岩波文庫.
和辻哲郎(2005)『日本精神史研究』、ワイド版岩波文庫.
田中久文(2000)『日本の「哲学」を読み解く――「無」の時代を生きぬくために』、ちくま新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]50. 近代日本思想(4)近代的自我の確立

50. 近代日本思想(4)近代的自我の確立
【テーマ】近代的自我とは何か?また、近代的自我を確立するための苦闘とは?

A:☆近代的自我:主体的・内面的な自己意識。
◎明治中期 自由・独立→自己の内面へ関心→☆近代的自我の確立への要求。
 ロマン主義:自由な感情・豊かな想像力を強調。自我・個性の尊重と解放を主張。
☆北村透谷(1868-1894):自由民権運動の挫折から☆ロマン主義へ転向。雑誌『文学界』創刊。主著『内部生命論』…現実世界(実世界)ではなく、精神の自己内部の世界(想世界)に自我の実現や思想を求める。
☆島崎藤村(1872-1943):新体詩『若菜集』…ロマン主義…自我の目覚めと苦しみを歌う。→『破戒』…☆自然主義へ
☆与謝野晶子(1878-1942):歌集『みだれ髪』…自己の情念や官能を大胆に肯定。
◆自然主義:自己の内面の醜さや救いようのない現実世界を赤裸々に書く。
☆国木田独歩(1871-1908):短編集『武蔵野』…自然主義から貧しい人々の生活を描く。
☆田山花袋(1872-1930)『蒲団』
☆石川啄木(1866-1912)『一握の砂』

B:☆夏目漱石(1867-1916):主著『私の個人主義』『こころ』『現代日本の開化』。
☆自己本位:自己の内面の主体性を追求し、自我を確立すること。
⇒自己本位に根ざす☆個人主義…自己の確立と☆エゴイズムとの格闘・克服に苦悩。
▲「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない」(『私の個人主義』)
○晩年…☆則天去私:小さな自分を去り、自己を超えるもの(大きな自然)の命ずるままに自分を任せる心境。

C:☆森鴎外(1862-1922):主著『舞姫』『高瀬舟』。
○『舞姫』→近代的自我に目覚めた青年が社会にぶつかり、葛藤。
⇒☆諦念(resignation;レジグナチオン、諦め):避けられない道理を悟り、それを甘受することで心の安定を得る、諦めの境地。

【参考文献・参考URL】
北村透谷著、勝本清一郎校訂(1970)『北村透谷選集』、岩波文庫.
島崎藤村(2006)『破戒』、ワイド版岩波文庫.
国木田独歩(2006)『武蔵野』、岩波文庫.
与謝野晶子自選(1985)『与謝野晶子歌集』、岩波文庫.
田山花袋(2002)『布団・一兵卒』、岩波文庫.
石川啄木著、久保田正文編(1993)『新編 啄木歌集』、岩波文庫.
夏目漱石(2002)『こころ』、ワイド版岩波文庫.
夏目漱石(1978)『私の個人主義』、講談社学術文庫.
森鴎外(1981)『舞姫・うたかたの記 他三篇』、岩波文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]49. 近代日本思想(3)キリスト教の移入、社会主義、大正デモクラシー

49. 近代日本思想(3)キリスト教の移入、社会主義、大正デモクラシー
【テーマ】日本の社会主義や大正デモクラシーの限界は何か?

A:キリスト教の移入
◎1873 キリシタン禁令撤廃→キリスト教広まる。
☆新島襄(1843-1890):アメリカ留学から帰国後、1875年同志社英学校を創立。
☆内村鑑三(1861-1930):主著『基督教徒の慰め』『余は如何にして基督教徒となりし乎』『代表的日本人』。
 無教会主義:教会や儀式にとらわれず聖書のみに基づく信仰→神の前の平等・個人の内面的独立を主張。
◆二つのJ:JesusとJapan…西洋文明・思想の根本=キリスト教←日本の発展に不可欠な思想。
●墓碑銘…「われは日本のために、日本は世界のために、世界はキリストのために、すべては神のために」
☆非戦論:日露戦争(1904-1905)に反対。
ぁ不敬事件:第一高等中学校講師時代に、教育勅語奉読式で宸署(明治天皇の署名)への礼拝を拒否←井上哲次郎(1857-1925)『教育と宗教の衝突』で国粋主義の立場からキリスト教排撃…植村正久と論争。

☆植村正久(1857-1925):1904年東京神学社を設立し、伝道者の養成にあたる。教会の自立独立と日本人による伝道を推進。儒教・仏教にもキリスト教につながる要素あり。

☆新渡戸稲造(1862-1933)”Bushido, the Soul of Japan”(邦訳『武士道』)…キリスト教を育てる土台に武士道が不可欠。
▲内村「武士道の上に接ぎ木されたるキリスト教」…武士道が内村のキリスト教信仰基盤

B:社会主義思想の移入
○日清・日露戦争→産業革命→労働問題・社会問題→☆社会主義に関心。
.リスト教的人道主義→社会主義へ
☆片山潜(1859-1933)、☆木下尚江(1869-1937)、☆安部磯雄(1865-1949)
中江兆民の自由民権論→社会主義へ
☆幸徳秋水(1871-1911)『社会主義神髄』…社会主義を紹介・運動の必要性を説く。
→帝国主義批判・内村鑑三らと非戦論→その後、社会主義を捨て直接行動論へ。
◎1910 ☆大逆事件→翌年、刑死⇒社会主義運動弾圧へ
ロシア革命(1917)後、マルクス主義が移入
☆河上肇(1879-1946)『貧乏物語』…マルクス主義経済を研究。
☆大杉栄(1885-1923)…☆無政府主義(アナーキズム):個人の自由や意思を至上とする直接行動による革命を主張。

C:☆大正デモクラシー:第一次世界大戦後、大正時代に高まった自由主義的・民主主義的思潮。都市の知識層が中心。
☆吉野作造(1878-1933):東京大学教授、『憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず』…”democracy”を「☆民本主義」と訳す。
⇒☆民本主義:主権が天皇にあることをあえて問わず、主権の運用に国民の意思を反映させることを求める⇒普通選挙制・政党内閣制へ影響。
☆美濃部達吉(1873-1948)…☆天皇機関説:統治権は国家にあるが、天皇は統治権を機能させるための国家の最高機関に過ぎず、憲法に従い統治権を行使する。⇒1935年、発禁処分。
☆平塚らいてう(1886-1891)…1911年雑誌☆『青鞜』創刊…「元始、女性は実に太陽であった」→女性解放、女性の自我の確立に影響。
◎1922 ☆全国水平社設立…「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」(水平社宣言より)

【参考文献・参考URL】
坂野潤治(2005)『明治デモクラシー』、岩波新書.
坂本多加雄(1996)『近代日本精神史論』、講談社学術文庫.
鹿野政直(2005)『近代国家を構想した思想家たち』、岩波ジュニア新書.
鹿野政直(2005)『近代国家と格闘した思想家たち』、岩波ジュニア新書.
内村鑑三(1997)『代表的日本人』、ワイド版岩波文庫.
内村鑑三(1936)『余は如何にして 基督信徒となりし乎』、岩波文庫.
新渡戸稲造著、矢内原忠雄訳(1991)『武士道』、ワイド版岩波文庫.
鈴木範久(2007)『新渡戸稲造論集』、岩波文庫.
幸徳秋水(1953)『社会主義真髄』、岩波文庫.
幸徳秋水著、山泉進校注(2004)『帝国主義』、岩波文庫.
松尾尊兌(2001)『大正デモクラシー』、岩波現代文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]48. 近代日本思想(2)自由民権運動、国家主義

48. 近代日本思想(2)自由民権運動、国家主義
【テーマ】中江兆民や植木枝盛の思想の特徴は何か?また、国家主義高揚の背景は?

A:☆自由民権運動
☆中江兆民(1847-1901)『民約訳解』(ルソー『社会契約論』の翻訳)…フランス流の急進的啓蒙思想を紹介…「東洋のルソー」と呼ばれる。
●民権(『三酔人経論問答』より)
├☆恩賜的民権:為政者が人民に恵み与える諸権利。
├☆恢復的民権・人民みずから獲得する諸権利。
└⇒●日本では恩賜的民権を育てて恢復的民権を目指すべき。
☆植木枝盛(1807-1892):民権を侵す政府に対する抵抗権を主張。

B:☆国家主義:文明開化以来の欧化主義への反発。日本独自の伝統の再評価の高まり。
☆徳富蘇峰(1863-1957):雑誌『国民之友』を刊行し☆平民主義(平民による下からの西洋化をめざす)を主張(→のちに国家主義へ)⇔三宅雪嶺と論争。
☆三宅雪嶺(1860-1945):雑誌『日本人』を刊行し欧化主義批判。
☆陸羯南(1857-1907):新聞記者、評論家。新聞『日本』創刊して社主に。
⇒三宅・陸…☆国粋主義:日本固有の伝統を保ちながらの改革を主張。
 ▲国粋主義は次第に排外的愛国主義に転嫁し、ファシズムと結びつく。
☆岡倉天心(1862-1913):日本美術の復興と紹介に尽力…☆「アジアは一つ」:西洋近代の原理は力、東洋近代の原理は美と精神。
☆西村茂樹(1828-1902):主著『日本道徳論』…西洋思想を取り入れつつ、儒学を基盤にした国民道徳を主張。
◎1890 ☆教育勅語発布…忠・孝を中心徳目に…「忠君愛国」
☆北一輝(1883-1937):国家主義運動の理論的指導者。主著『日本改造法案大綱』…☆超国家主義(ultra nationalism):極端な国家主義。排外・侵略主義と人権抑圧や国家への従属が骨格。

【参考文献・参考URL】
鹿野政直(2005)『近代国家を構想した思想家たち』、岩波ジュニア新書.
坂野潤治(2005)『明治デモクラシー』、岩波新書.
田中浩(2000)『日本リベラリズムの系譜――福沢諭吉・長谷川如是閑・丸山真男』、朝日選書.
坂本多加雄(1996)『近代日本精神史論』、講談社学術文庫.
坂野潤治(2005)『近代日本の国家構想――1871-1936』、岩波現代文庫.
中江兆民著、桑原武夫・島田虔次訳・校注(1965)『三酔人経論問答』、岩波文庫.
中江兆民著、桑原武夫・島田虔次訳・校注(2007)『三酔人経論問答』、ワイド版岩波文庫.
家永三郎編(1974)『植木枝盛選集』、岩波文庫.
松永昌三(2001)『福沢諭吉と中江兆民』、中公新書.
北一輝著、近藤秀樹編集(2008)『国体論及び純正社会主義(抄)』、中公クラシックス.
米原謙(2003)『徳富蘇峰――日本ナショナリズムの軌跡』、中公新書.
渡辺京二(2007)『北一輝』、ちくま学芸文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]47. 近代日本思想(1)洋学、啓蒙思想

47. 近代日本思想(1)洋学、啓蒙思想
【テーマ】福沢諭吉が日本の近代化の際に克服すべきものとして捉えていたものは何か?

A:蘭学・洋学
☆蘭学:長崎オランダ商館から伝えられた西洋の学問。
☆洋学:蘭学を含む、西洋から伝えられた学問の総称。

☆青木昆陽(1698-1769)…甘藷の栽培。
☆前野良沢(1723-1803)・☆杉田玄白(1733-1817)『解体新書』…オランダ解剖書『ターヘル=アナトミア』の翻訳。
→人々に影響⇒幕府は蘭学を警戒。
☆高野長英(1804-1850):主著『戊戌夢物語』(幕府の鎖国政策批判)。オランダ商館医シーボルト(P. F. von Siebold、1796-1866、学塾兼診療所の☆鳴滝塾を開く)に医学を学ぶ。☆渡辺崋山(1793-1841、主著『慎機論』[モリソン号事件・異国船打払令など批判])らとともに尚子会(☆蛮社)を結成し、西洋の技術や国際情勢の知識を得ようとする。
⇒高野・渡辺らの鎖国政策批判⇒◎1839 ☆蛮社の獄⇒刑死

B:幕末の思想
◎1854 開国…尊王攘夷論盛んに
          ↑
☆藤田東湖(1806-1855)ら☆水戸学…水戸藩で『大日本史』編纂を中心にしておこった学派。朱子学を中心に、国学・神道を含む大義名分論・尊王論(…天皇崇拝思想)を主張→のちに攘夷論(…外国人排斥思想)も主張。

☆佐久間象山(1811-1864):アヘン戦争(1840-1842)で清がイギリスに敗れたのに危機感を抱く→☆「東洋道徳、西洋芸術(=技術)、精粗遺さず、表裏兼該し(=あますところなく詳しく研究し)」なければならない。
☆和魂洋才:東洋の精神的伝統(儒学)の基盤の上に西洋の知識・技術を取り入れる。
▲「和魂」:東洋の道徳、「洋才」:西洋の技術。
☆横井小楠(1809-1869)…「尭舜孔子の道を明らかにし,西洋器械の術をつくさば,何ぞ富国にとどまらん」
⇒佐久間・横井…●和魂洋才の長所を取り入れ、国力の充実を主張。

☆吉田松陰(1830-1859):佐久間象山に洋学を学ぶ。☆松下村塾を開き尊王攘夷論を説く。
●陽明学に基づく忠節・誠⇒「天道も君道も一つの誠の字の他なし」⇒私欲を捨て誠(生き生きした自己の純粋な心情)を持ち、天道と一体になれば、天下の民の主君である天皇に忠誠をつくすことができる=☆一君万民論
◎1858 ☆安政の大獄→刑死

C:啓蒙思想
◎1868 明治維新…富国強兵
├文明開化…西洋の制度・文明を受容。
└祭政一致…神仏分離令、廃仏毀釈。
◎1873 ☆明六社…西洋思想を紹介し、古い封建制度を批判。☆森有礼を中心に結成。
☆森有礼(1847-1889)…一夫一婦制を説く。
☆中村正直(1832-1891)…『西国立志編』(スマイルズ『セルフ=ヘルプ』の翻訳)、『自由之理』(J. S. ミル『自由論』の翻訳)
☆西周(1829-1897)…西洋哲学を日本に紹介…”philosophy”→「哲学」など、「主観」「客観」「理性」「現象」など多くの訳語。
☆加藤弘之(1836-1916)…立憲制度を紹介。

☆福沢諭吉(1834-1901):思想家。緒方洪庵の適塾に入門。欧米諸国を見聞後、1868年慶応義塾を創設。主著『学問のすゝめ』『文明論之概略』『西洋事情』『福翁自伝』。
 天賦人権論:☆「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」(『学問のすゝめ』)
独立自尊:☆「一身独立して一国独立す」⇒後年…☆脱亜論
├α:天賦人権に基づく自由・独立の精神⇒自ら判断し行動する精神を求める。
└β:学問にはげむこと⇒「人間普通日用に近き☆実学」⇒独立自尊の生活へ
☆実学:実証的・合理的、実用的・実利的な学問。
●「有形において数理学(=実学)、無形において☆独立心」=東洋・日本に欠けている
 ▲数理学:自然科学・社会科学・人文科学の一部…理論・実証を伴う。
☆脱亜論:アジアを野蛮な文明と見なし、日本はアジアから抜け出て、西洋文明諸国に入り、中国や朝鮮に対し指導的な立場をとるべきとする考え。

【参考文献・参考URL】
鹿野政直(2005)『近代国家を構想した思想家たち』、岩波ジュニア新書.
坂野潤治(2005)『明治デモクラシー』、岩波新書.
田中浩(2000)『日本リベラリズムの系譜――福沢諭吉・長谷川如是閑・丸山真男』、朝日選書.
坂本多加雄(1996)『近代日本精神史論』、講談社学術文庫.
福沢諭吉(1996)『学問のすゝめ』、ワイド版岩波文庫.
福沢諭吉(1995)『文明論之概略』、岩波文庫.
田中彰(2001)『吉田松陰――変転する人物像』、中公新書.
小泉信三(1966)『福沢諭吉』、岩波新書.
松永昌三(2001)『福沢諭吉と中江兆民』、中公新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]46. 近世日本思想(3)庶民の思想

46. 近世日本思想(3)庶民の思想
【テーマ】石田梅岩や安藤昌益、二宮尊徳は社会との関わりをどうとらえていたのだろうか?

A:背景
◎江戸 町人…下層身分     ▲当時〈商業=卑しい〉
→商品経済発達につれ、経済力蓄えた町人が経済を支配→独自の文化・思想

B:☆石田梅岩(1685-1744)
●「商人の買利は士の禄(=俸禄)に同じ」(『都鄙問答』)⇒町人の商業での利益追求を正当なものとして肯定。
●町人道徳⇒武士道徳と同じもの=道徳については武士・町人の上下の区別はない。
├ 正直:自己と他者の所有を明確にすること←利己心から離れたもの。
├◆倹約:世間の富を大切にすること。
└☆勤勉:家業に励むこと。
⇒身分の区分は形・職能の区分(社会的分業)に過ぎず、本来の「天の一物」に変わりないので、それぞれの身分・職分に満足すべし=☆知足安分(「各人は足るを知って分に安ぜよ」)…平易な言葉で語り、広まる⇒☆心学(石門心学)

C:☆安藤昌益(1703-1762):主著『自然真営道』。
●理想=☆自然世:すべての人が直接田畑を耕し衣食住を自給する(☆万人直耕)平等な社会。
…武士・町人=「不耕貧食の徒」として非難=☆法世(「こしらえた世[人為的な社会]」の意…差別と搾取に満ちた社会。階級差別社会)の産物。

D:☆二宮尊徳(1787-1856)
○農業=☆人道が☆天道に働きかけることで成立。
├☆天道:事物・事象のはたらき。
└☆人道:人が自らの力でなす行為。
●人間
├☆天道…人間の欲望。
└☆人道…倹約と勤労で欲望を制御する。
●倹約と勤労の具体的方法⇒☆報徳思想の実践
├☆分度:自らの経済力に応じて、一定限度内で生活すること。
└☆推譲:分度で生じた余裕を、将来のために備え、窮乏に苦しむ他者に譲ること。
⇒☆報徳思想:天地、君主、父母、祖先などの他者によって与えられた徳の恩恵に報いること。

E:その他
☆井原西鶴(1642-1693)…浮世草子
☆近松門左衛門(1653-1724)…世話浄瑠璃⇒☆義理(他者との関わりで従い守るべき道理)と人情の相克を描く。
☆西川如見(1648-1724)…「下に居て、上をしのがず、他の威勢あるを羨まず、簡略質素を守り、分際に安んじ」て生活すること⇒町人の生き方を肯定。
☆富永仲基(1715-1746):儒学者。町人の教育施設で自由な気風で知られた☆懐徳堂に学ぶ。
☆三浦梅園(1723-1789):自然哲学者。天地自然の客観的法則(☆条理)を求める。
☆山片蟠桃(1748-1821):実学者。懐徳堂に学び、合理的思想を説く。霊魂不滅の思想を否定(☆無鬼論)、宗教批判→非科学的迷信から解放された学問(実学)の成立を目指した。

【参考文献・参考URL】
子安宣邦(1998=2010)『江戸思想史講義』、岩波現代文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]45. 近世日本思想(2)日本の国学

45. 近世日本思想(2)日本の国学
【テーマ】本居宣長が説く真心とは何か?

A:国学のおこり
☆契沖(1640-1701):国学の先駆者。『万葉代匠記』…『万葉集』を実証的に研究。
⇒☆国学:外来思想を受容する前の古代日本社会を理想とし、直接、日本の古典を文献学的に研究し、日本固有の文化や人間の精神の真のあり方を究明する。←古学派の手法から影響。
☆荷田春満(1669-1736):国学者。契沖の万葉学と伊藤仁斎の古義学に学び、『創学校啓』で国学の学校建設を幕府に訴えるも、実現せず。
↓弟子
☆賀茂真淵(1697-1769):国学者。主著『万葉考』『歌意考』『国意考』。
○『万葉集』を中心に古典を実証研究…☆古道(古代の精神[古意]を明らかにする)
⇒☆高く直き心(おおらかで素直な心)・☆「ますらをぶり(益荒男振)」(男性的でおおらかな気風)を古代日本の精神として見出す。

B:☆本居宣長(1730-1801):国学者。国学を大成。主著『古事記伝』『源氏物語玉の小櫛』『玉勝間』。
○古典の実証的研究の前に…☆漢心の排除が前提
☆漢心:‘四によって道を理解しようとする心。外国のものが優れ、日本のものが劣っているとする考え。
○古典の実証的研究から…
 もののあはれ(人々が事物に触れたときに共通に抱く、感動する心・心情)が人間の生き方の基本。
◆「たをやめぶり(手弱女振)」:女性的で優雅な歌風⇒古代日本の精神として重視。
☆惟神の道:神代から続く日本固有の道。私心を捨て、神の御心のままに従うこと。
=理屈ではない☆真心(偽りのない、生まれながらの心)に則って生きること。
⇒道は神が創始し、天皇が受け継いできており、すでにあった。
▲仏教…悟りの道 ▲儒教…聖人の道←いずれも人為的なもの。

C:神道の変遷
◎古代 古神道…祭司のため
〜〜〜〜儒教・仏教伝来〜〜〜〜
◎奈良・平安 神仏習合・本地垂迹説←密教の影響
→儒教・仏教思想を神話で教義化→正直を中心に清浄・慈悲を説く
◎鎌倉 ☆伊勢神道(渡会神道)…反本地垂迹説…神主仏従
◎室町 ☆吉田神道…☆惟神の道(神代から続く日本固有の道)を主張する唯一神道。
◎江戸 ☆垂加神道…神人合一説(←朱子学)、天皇崇拝に基づく大義名分・報徳道徳。

◎江戸 ☆復古神道…古代神道への復帰、天皇への服従。
☆平田篤胤(1776-1843):国学者。本居宣長死後の門人。古道と神道を結びつけ☆復古神道を完成。
○儒教や仏教思想を排斥し、古代神道の考えで万物を説明⇒現在の社会道徳は産霊神によりできたものであり、神々の子孫である天皇への服従こそ神の道⇒人々に民族意識を高め、尊王攘夷論に影響。

◎江戸 ☆教派神道…修行や現世利益、人々の救済を重視する。黒住教、天理教、金光教などの民衆宗教。

【参考文献・参考URL】
子安宣邦(1998=2010)『江戸思想史講義』、岩波現代文庫.
子安宣邦(2005)『本居宣長とは誰か』、平凡社新書.
高橋正夫(1986)『本居宣長――済世の医心』、講談社学術文庫.
鎌田東二(1996)『聖なる場所の記憶――日本という身体』、講談社学術文庫.
末木文美士(2006)『日本宗教史』、岩波新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]44. 近世日本思想(1)日本の儒学古学

44. 近世日本思想(1)日本の儒学古学
【テーマ】荻生徂徠の政治道徳の特徴とは何か?

☆古学:江戸時代に成立・発展。朱子学派・陽明学派に対し、漢、宋以来の儒学解釈を排し、孔子・孟子の原典に直接研究し、その真意を探究する。

A:☆山鹿素行(1622-1685):はじめ林羅山に儒学を学ぶも、古学に転向。『聖教要録』で官学である朱子学を批判し、配流される。
○朱子学批判…天理が抽象的で、日常の倫理からかけ離れている。
⇒道理を日常生活の実用範囲までに限定し、欲望や情念を容認。
○儒学の立場から従来の☆武士道を批判→儒教倫理としての☆士道を展開。
▲武士道…山元常朝(1659-1719)『葉隠』…「武士道といふは死ぬことと見付けたり」
☆士道:武士は礼節を重んじ、威厳をもち、清廉・高潔でなければならない=治者としての武士に相応しい道徳。

B:☆伊藤仁斎(1627-1705):主著『童子問』『孔孟字義』。
☆古義学:『孔子』『孟子』を直接研究し、儒教の原理や道徳を探る。孔孟の真意(古義)を文献学的に実証する…朱子学・陽明学は後世の儒教解釈に過ぎない。
┌☆忠信:他者に対し、ありのままの自己を尽くすこと。
├☆忠恕:他者の心情を自分のことのように察すること。

☆誠:自己・他者にも偽りのない心=仁愛の実現のための具体的方法
↓  ▲「誠ならざれば、仁にあらず」
☆仁愛:人と人との関わりにおいて、自己と他者が互いに愛すること⇒儒学の根本
 ▲「われよく人を愛し、人またわれを愛し、相親しみ、相愛し」(『童子問』)

C:☆荻生徂徠(1666-1728):主著『弁道』『弁名』『政談』。
☆古文辞学:『論語』『孟子』より古い六経(『詩経』『書経』『易経』『春秋』『礼記』『楽経』)を中国語で直接読み、その真意を実証的に解明する。
●孔子が説く道…☆「天下を安んずるの道(安天下の道)」=☆先王の道:先王(=中国古代の聖人で、優れた統治者[尭、舜、禹、湯、周の文王、武王、周公]の7人)が国を治めるために制定したもの。具体的には、☆礼楽刑政(儀式・音楽・刑罰・政治)の具体的制度⇒この道に従えば、自ずと☆経世済民(世を治め民を救う)=政治道徳
…●道は自然に存在するのではなく、人為的に考案され作られたもの。
○士農工商などの社会秩序=民生安定のため、聖人が制定したこと。
⇒各身分がお互いに助け合い、共同生活を営む=社会的分業論
⇒すべての人が、君主が民の父母となるのを助ける役人である=万民役人論
○すべての人が聖人になるわけではない⇒●政治制度や政治道徳を、個人道徳から分離

【参考文献・参考URL】
子安宣邦(1998=2010)『江戸思想史講義』、岩波現代文庫.
山鹿素行著、土田健次郎全訳注(2001)『聖教要録・配所残筆』、講談社学術文庫.
山本常朝著、和辻哲郎・古川哲史校訂(1940)『葉隠(上)』、岩波文庫.
山本常朝著、和辻哲郎・古川哲史校訂(1941)『葉隠(中)』、岩波文庫.
山本常朝著、和辻哲郎・古川哲史校訂(1941)『葉隠(下)』、岩波文庫.
三島由紀夫(1983)『葉隠入門』、新潮文庫.
小池喜明(1999)『葉隠――武士と「奉公」』、講談社学術文庫.
山本博文(2001)『『葉隠』の武士道――誤解された「死狂ひ」の思想』、PHP新書.
子安宣邦(2004)『伊藤仁斎の世界』、ぺりかん社.
子安宣邦(2008)『徂徠学講義――『弁名』を読む』、岩波書店.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]43. 近世日本思想(1)日本の儒学ー觧匈悄⇒枳棲

43. 近世日本思想(1)日本の儒学ー觧匈悄⇒枳棲
【テーマ】林羅山は幕藩体制を正当化する思想として朱子学をどのように展開したか?

A:儒学の変容
◎7C〜 遣隋使・遣唐使派遣…儒学を受容
⇒●為政に関する儀礼的規範として受容…官人の為政、律令制度
…『礼記』『易経』など…明経道

B:☆朱子学…●江戸時代の幕藩体制を支える為政・道徳原理
⇒☆理(事象を貫く根本原理)としての☆天に拠り所を求める。
☆藤原惺窩(1561-1619):禅僧から身分を捨てて儒学者になる。徳川家康に授業を講義するも仕官せず、弟子の林羅山を家康に推挙する。近世儒学の開祖とされる。
○儒学を公家や禅僧の教養から独立させる…人間の道徳を人間関係(人倫)に求める⇒仁や義を無視する仏教を批判

☆林羅山(1583-1657):藤原惺窩の弟子。朱子学の官学化をすすめ、江戸幕府の御用学者に(…死後、1690年に徳川綱吉の援助で神田昌平坂に私塾が建てられる→のちの昌平坂学問所)。主著『春鑑抄』『三徳抄』。
☆上下定分の理:天地自然に上下高低の理があるように人倫・身分秩序にも上下の理が定まっていること⇒士農工商の身分秩序を正当化。
●為政者(君子)の道徳
 存心持敬:☆敬(自己をつつしむこと)により情念や私欲を捨て本来の心を保つこと。
◆天人合一:☆天理(世俗世界を貫く原理原則)を自己で体現すること。
☆格物致知:「事物の理を究明し、知識を極める」=個々の事物や道理を明らかにし、それらをすべて知り尽くすように努めること。
 ▲「格物」の意…朱子学「物にいたる」⇔陽明学「物をただす」

▲☆山崎闇斎(1618-1682):神道家。朱子学の理と日本神話の神との一致を説く☆垂加神道を提唱。京都に私塾を設け、崎門学派を形成。
└▲☆垂加神道:儒学と神道の合一を説く。神人合一説(天道即ち人道の一元論)を唱え、天皇崇拝に基づく大義名分と封建道徳を説く→尊王思想に影響。

▲☆貝原益軒(1630-1714):朱子学者。本草学(中国から伝わった薬物学。動植物や鉱物などの効能を研究)を実証研究。主著『大和本草』。
○窮理を重視する合理的批判的精神(…「信ずべきを信じ、疑うべきを疑う」を後に育てる→西洋科学受容の素地に。

▲☆木下順庵(1668-1755):朱子学者。弟子に新井白石、雨森芳州など。
▲☆新井白石(1657-1725)『西洋紀聞』…朱子学の立場からキリスト教を批判。
▲☆雨森芳州(1668-1735)『交隣堤醒』…対朝鮮外交を担当。

C:陽明学
☆中江藤樹(1608-1648):陽明学者。「日本陽明学の祖」と言われる。近江で母に孝を尽くしつつ、私塾「藤樹書院」を開き、自らの思想を深めたことから「近江聖人」と呼ばれる。門下に熊沢蕃山など。主著『翁問答』。
☆孝:人を☆愛し敬うこと。道徳の根本であり、人間関係から天下の事象までを貫く原理。
⇒☆時(時期)・処(行為の場所)・位(行為するものの社会的地位・能力・身分)に応じた形で実践すべきもの。
…「身をはなれて孝なく、孝をはなれて身なし」
○晩年…☆知行合一:☆良知(人が生まれながらに持つ、理非を判別する知)を行動で実践すること。

▲☆熊沢蕃山(1619-1691):陽明学者。法(礼法)はあくまでその状況(時処位)においてのみ妥当するものであって、普遍的性格を持つものではないのだから、たんに聖人の事蹟を学んではならず、その心を学ぶべきだと説いた。主著『集義和書』。

【参考文献・参考URL】
子安宣邦(1998=2010)『江戸思想史講義』、岩波現代文庫.
中江藤樹著、加藤盛一校註(1936)『翁問答』、岩波文庫.
鈴木貞美(2009)『自由の壁』、集英社新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]42. 中世日本思想(1)鎌倉新仏教栄西、道元、日蓮

42. 中世日本思想(1)鎌倉新仏教栄西、道元、日蓮
【テーマ】禅宗(…曹洞宗)と日蓮宗の違いは何か?

☆禅宗(坐禅宗):禅はサンスクリット語「dhyana」の音写…「定・静慮・内観」。☆坐禅(静坐し[調身]、呼吸を整え[調息]、心を統一し黙想する[調心])による自力で悟りの境地に至る教え。
▲インドのウパニシャッド哲学時代に、瑜加(yoga:ある対象を精神に集中させ、精神の統一・安定を図る行)か禅観(dhyana:雑念を捨て無念無想・無我になる行)のいずれかが行われていた。6Cに僧菩薩達磨がインドから中国に伝えてから、老荘思想と結びつき発展。唐〜宋代に盛んになり、日本には臨済宗(栄西)、曹洞宗(道元)、黄檗宗(隠元)が伝わり、今日に至る。

A:☆栄西(1141-1215):☆日本臨済宗の開祖。比叡山で天台宗(台密)を学ぶ。二度目の入宋の時に臨済禅を学び、天台宗内部で禅定を強調。その後幕府の帰依を受けて建仁寺を開く。比叡山から圧力があったが、鎌倉幕府や武士上層部に支持者を得る。また、南宋から喫茶を伝える。主著『興禅護国論』(禅宗非難に対する弁明の書。戒律を守り、禅行が鎮護国家に役立つことを主張…禅を興じ、優れた人材を育成することが国を守る基礎である)。
☆公案:修業の際に、悟りに到達させるために師が弟子に与える問題。
○時に棒喝を与えられる厳しいもの。

B:☆道元(1200-1253):☆日本曹洞宗を開祖。比叡山で学び、建仁寺で栄西門下の明全に師事。宋に渡ると、如浄のもとで修業し、悟りを経て曹洞宗を伝える。越前国(福井県)に永平寺を開く。主著『正法眼蔵』(←「仏教の真髄」の意)『永平広録』。
○末法思想・念仏を批判…今生の自己を見限り、後生に期待するのは誤っている。
●悟り(仏の知)は人々に本来備わっているが、坐禅の修業をしないと顕れない。
⇒坐禅の修業をすれば誰でも自らに備わる悟りを明らかにできる。
├☆只管打坐:身も心も尽くしひたすら坐禅すること。
├☆身心脱落:身・心が一切の執着から離れ、悟りの境地に入ること。
└☆修証一等:修(修業=坐禅)と証(悟り)が一体であること=☆正法眼蔵

C:☆日蓮(1222-1282):比叡山で『法華経』の解釈を学び、のちに☆日蓮宗(法華宗)を開く。鎌倉を中心に布教し、辻説法で他宗を攻撃・論破。北条時頼に『立正安国論』を献じ改信迫るも受け入れられず、伊豆、佐渡へ流刑。赦されて後、身延山に隠遁。主著『立正安国論』『開目抄』。
○末法の世で、『法華経』こそ真なる唯一の経典・釈迦の究極の教え。
▲最澄は『法華経』の前半十四品のうち方便品を拠り所にして一切成仏を開く(迹門)に対し、日蓮は後半十四品のうち(本門)、如来寿量品第十六で説かれる☆久遠実成の仏(釈迦は久遠の昔に成仏を実現し、以来ずっと教化を続けている存在である)を拠り所にする。
⇒☆「南無妙法蓮華経」と☆題目(=法華経の内容全てが含まれる=釈迦の備える功徳[善行の成果])を唱え(☆唱題)れば、仏陀と一体になり成仏でき、仏国土が実現する。
⇒●社会変革の視点が強い。
☆折伏:相手を強く責め心眼させること=他宗を論破し排撃すること=『法華経』に帰依させること。
☆四箇格言:☆「念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊」:念仏宗(浄土宗)は無間地獄へ落ちる教え、禅宗は天魔の仕業(悪魔の教え)、真言宗は国を滅ぼし、律宗は国賊である。←天台宗だけ非難せず…▲日蓮自ら最澄の精神の継承者と信じている。
⇒法難・弾圧される⇒しかし日蓮自ら、釈迦滅後に仏法を付託された地涌(地から涌いた)の菩薩と信じ、「我日本の柱とならん、我日本の眼目とならん、我日本の大船とならん」(『開目抄』)と唱え、☆「法華経の行者」(末法の世に『法華経』を広めることが人々の悩みを救う唯一の道と確信すること)の自覚を深めた。

【確認】☆鎌倉新仏教の特徴
仝朕佑竜澪僂鯆謬罅
一つの行への集中を説く…単純化。
Cでも実践可能な易行。
ぬ誼里兵圓篋畤佑砲盖澪僂瞭擦鮗┐后
タ討靴澆笋垢は楕犬農發。
⇒民衆に広まる。

【参考文献・参考URL】
松岡剛次(1995)『鎌倉新仏教の誕生――勧進・穢れ・破戒の中世』、講談社現代新書.
鈴木大拙(2004)『禅学入門』、講談社学術文庫.
秋月龍Α1970)『道元入門』、講談社現代新書.
末木文美士(2000)『日蓮入門――現世を撃つ思想』、ちくま新書.
菅野博史(2001)『法華経入門』、岩波新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]41. 中世日本思想(1)鎌倉新仏教)〜魁⊃二臓一遍

41. 中世日本思想(1)鎌倉新仏教)〜魁⊃二臓一遍
【テーマ】浄土宗と浄土真宗の違いは何か?

A:☆法然(1133-1212):比叡山で出家。唐の善導(613-681)の著書に影響を受け、専修念仏の教えに開眼し☆浄土宗を開く。のちに比叡山を降りて、東山大谷で専修念仏を説く。晩年、延暦寺や興福寺の僧の訴えにより弾圧される。主著『選択本願念仏集』。
●末法の時代に、自力で学問・修業し悟りを得ようとする教え(聖道門[難行道])は困難。
   ▲学問・修業は素質や能力が必要。
⇒他力を信じ浄土に生まれ、後生に悟りを得ようとする教え(浄土門[易行道])以外にない。
⇒☆専修念仏を説く=聖道門を捨て、☆弥陀の本願(阿弥陀仏が修行の際にたてた請願。48願の中の第18願で、念仏を唱える衆生をすべて浄土へ往生させたいとする願い)を信じ、専ら☆「南無阿弥陀仏」と六字の名号(←すべての美徳が含まれ、他の一切の所業に勝る)を唱える念仏(称名念仏)を唱えれば、誰でも極楽浄土へ往生できる⇒誰でもできる易行として支持。

B:☆親鸞(1173-1262):☆浄土真宗を開祖。比叡山で修行の後、法然の弟子になる。法然の弾圧時に連座され、越後国(新潟県)に流され、愚禿(「愚かな禿頭者[頭を丸めたもの]」の意)を姓とし、恵信尼と結婚。晩年、京都に戻り、悪人正機の考えを徹底し、自然法爾を説く。主著『教行信証』。
●自己…欲望や執着(煩悩)を捨て去ることができない罪深い存在。
☆悪人正機説:☆「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」(☆唯円[1222?-1289?]『歎異抄』):自力自善(自分の力で善行を積む)で往生を図る人(善人)よりも、自力自善で救われないと悟り、阿弥陀仏の本願にすがる人(悪人)のほうが、間違いなく往生できると説く。
☆絶対他力:念仏を唱えることも、すべてが阿弥陀仏のはからいによること。
☆自然法爾:自力を捨て、阿弥陀仏の他力のはからいのままに自己を委ねること。

C:☆一遍(1239-1289):☆時宗の開祖。はじめ天台の学を修めたが、各地を遊行し、踊念仏を始めて時宗を広める…「遊行上人」「捨聖」。
☆時宗:浄土宗の一派。平生を常に臨終のときと心得て、称名念仏(←南無阿弥陀仏の名号こそが真の実在である)することを説く。諸国を遊行し布教する…「遊行宗」

【参考文献・参考URL】
松岡剛次(1995)『鎌倉新仏教の誕生――勧進・穢れ・破戒の中世』、講談社現代新書.
佐藤正英(1998)『親鸞入門』、ちくま新書.
阿満利麿(2011)『親鸞』、ちくま新書.
山折哲雄(1995)『日本人と浄土』、講談社学術文庫.
山折哲雄(2010)『『教行信証』を読む――親鸞の世界へ』、岩波新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]40. 古代日本思想(2)仏教の伝来∧唇楕教前期(空海)〜平安仏教後期

40. 古代日本思想(2)仏教の伝来∧唇楕教前期(空海)〜平安仏教後期
【テーマ】平安仏教の特色は何か?

A:【確認】平安仏教前期
 現世利益のための加持祈祷(仏や神の加護を受けること)など…密教化
奥山に主要寺院→奥山で学問・修行
○教説の体系化

☆空海(弘法大師、774-835):主著『三教指始』『十住心論』。
○最澄らとともに入唐→長安で密教を学ぶ。
▲☆密教:7Cにインドでおこった大乗仏教の教え。「秘密の教え」の意。言葉で伝えきれない神秘的な秘密の教え。仏の知(釈迦が悟った真理)そのものである大日如来(毘盧遮那仏)が享受している真の教説。瞑想や曼荼羅などの象徴を重視、『大日経』『金剛頂経』が主な経典。真言宗(東密)が代表的だが、のちに天台宗も密教化(台密)。
⇔顕教:人々の資質や能力に応じて説かれた釈迦の教え。「言葉で伝えられる仮の教説」。
☆真言宗(密教の一派…真言密教[東密])を伝え、☆高野山に☆金剛峯寺を建立。
●真言宗の究極目標=☆即身成仏:三密(身に印[印契:仏の神秘的な力などを象徴する指や手の独特の形]を結び、口に真言[サンスクリット語「mantra」]を唱え、心に大日如来を描く)の行をすれば、現に生きている身のままで自己が大日如来と融合・一体化できる。
☆曼荼羅(サンスクリット語「mandala(宇宙の真理を表現したもの)」⇒大日如来の多様なはたらきの化身。仏の知の慈悲のあらわれ)を伝える。

B:平安仏教中期
☆空也(阿弥陀聖・市聖、903-972):諸国を遊行、☆浄土教の先駆。☆踊念仏をはじめる…cf. 盆踊り
▲☆浄土教:阿弥陀仏を信ずれば、死後に極楽浄土に往生できると説く教え。唐の善導(613-681)が説き、唐・宋代に栄える⇒日本の浄土信仰のルーツ
▲☆浄土信仰:現世は苦しみに満ちた世界だが、阿弥陀仏の慈悲の力により、西方の楽しみに満ちた清らかな世界(極楽浄土)へ往って生まれること(往生)ができる。

☆源信(942-1017):天台宗の僧。主著『往生要集』。浄土信仰を広める。
☆「厭離穢土、欣求浄土(この穢れた世俗の世界を厭い捨て、次の生で極楽浄土に往き生まれることを欣い求めよ)」を説く…cf. ☆いろは歌
├ 観想念仏:阿弥陀仏や極楽浄土を思い描く。
└◆称名念仏(口称念仏):☆「南無阿弥陀仏」と称える。
▲南無:サンスクリット語「namo(私は帰依します)」の音写。
☆来迎図(臨終時に阿弥陀仏が極楽浄土に迎えに来る様子を描いた図)を創始。

C:平安仏教後期…天災・戦乱相次ぐ→☆末法思想広まる。
☆末法思想:釈迦の没後、正法→像法→末法の段階を経て仏教が衰退するという仏教の歴史観。仏教の教えを理解する人々の能力が次第に衰えていくことから衰退するとされる。
\桔^貔蘿:教(釈迦の説いた教説)・行(修行)・証(修行の結果、仏の知を得ること=悟り)の三つがそろった時代。
∩法一千年:教・行のみしか実現されていない時代。
K法一万年:わずかに教のみが残っている時代。1052(永承7)年から末法に入ったとされる。

☆神仏習合:仏と神を重ね合わせ折衷したもの。神宮寺設置、神前での読経、寺に鎮守の神社など。→1868年神仏分離令強行まで日本の信仰形態の基本。
☆本地垂迹説:仏・菩薩が人々を救うために現れた仮の姿が神(=権現)であるとする考え。
⇔反本地垂迹説:神が本体で仏・菩薩が仮の姿であるとする考え(鎌倉時代末期〜)。

【参考文献・参考URL】
立川武蔵(1995)『日本仏教の思想』、講談社現代新書.
立川武蔵(1998)『最澄と空海』、講談社選書メチエ.
義江彰夫(1996)『神仏習合』、岩波新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]39. 古代日本思想(2)仏教の伝来(教の伝来〜奈良仏教〜平安仏教前期(最澄)

39. 古代日本思想(2)仏教の伝来(教の伝来〜奈良仏教〜平安仏教前期(最澄)
【テーマ】奈良仏教の特色は何か?

A:仏教の伝来
◎6C 百済から仏教が伝来…仏=☆蕃神:外国から渡来した神
●仏教・儒学など…日本在来の儀礼をより豊かなものにし、新たな要素を付け加える儀礼として受容される⇒異質な思想と折り合いながら併存…☆文化の重層性(和辻哲郎)

☆聖徳太子(574-622)
○日本で初めて経典を講じる。
☆『三経義疏』:法華経・勝鬘経・維摩経の注釈書。
☆憲法十七条…仏教に基づく為政の理念→官人の心得
 第1条「和を以て貴しとなし、忤ふる(=逆らう)ことなきを宗となせ」
 第2条「篤く三宝を敬え。三宝とは仏・法(=仏の教え)・僧(=仏の教えを学び伝える人)なり」
 第12条「我れ必ずしも聖にあらず、彼れ必ずしも愚にあらず、ともに凡夫のみ」
☆凡夫:欲望にとらわれた無知の存在⇒☆「世間虚仮、唯仏是真(世間は虚仮なり、唯仏のみ是真なり)」(聖徳太子の遺言)…仏教的人間観
⇒●仏から見れば人間は皆、凡夫であり、身分や優劣、賢愚の差は見かけに過ぎない。

B:奈良仏教
々餡畔教…☆鎮護国家(仏教を盛んにし、仏教の力で国家を安泰にする)実現のための儀礼・教説として隆盛。
◎754 唐から☆鑑真(688-763)渡来。
├授戒制度(正式な僧侶としての資格[戒]を授ける制度)確立。
│  ▲鑑真が伝えた戒は小乗仏教のもの。
├東大寺に戒壇(戒を授ける場所)をつくる。
└→のちに唐招提寺を建立。
教義研究…☆南部六宗(三輪宗・成実宗・法相宗・倶舎宗・華厳宗・律宗)
A痢陳廷の承認が必要→官僧として仏教の教説を学び、修行することが求められる。
├→中央政界に進出。
└→私度僧(朝廷の承認がない僧。官許なく出家して僧を自称)続出
→☆行基(遊行聖、668-749):私度僧集団を指導。道や橋の建設や布施屋(無料宿泊所)を作るなど社会事業を展開。はじめは国家に弾圧されるも、のちに東大寺毘盧遮那仏(華厳宗の仏。広く照り輝く仏の意)造立に尽力。

C:平安仏教前期
 現世利益のための加持祈祷(仏や神の加護を受けること)など…密教化
奥山に主要寺院→奥山で学問・修行
○教説の体系化

☆最澄(伝教大使、767-822):主著『顕戒論』『山家学生式』。
◎804 入唐…☆天台宗を学ぶ。
⇒☆日本天台宗:法華経が中心経典。法華経中心の教学[円]・密教・禅・戒律を合わせ行う四宗合一の総合性を基本。☆比叡山に☆延暦寺を建立し、総本山にする。
○大乗菩薩戒のみによる受戒制度確立…比叡山で12年間学問や修行を経て僧になる。
 ▲大乗菩薩戒:本来は大乗仏教の本来在家の修行者に向けられたもの。
 ▲最澄…比叡山に新たな戒壇を設ける。
○大乗仏教の教え☆「一切衆生悉有仏性」(生あるものはすべて仏になる可能性を持っている)を強調⇒修行による仏性。

【参考文献・参考URL】
立川武蔵(1995)『日本仏教の思想』、講談社現代新書.
立川武蔵(1998)『最澄と空海』、講談社選書メチエ.
東野治之(2009)『鑑真』、岩波新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]38. 古代日本思想(1)日本の風土と古代日本人の考え方

38. 古代日本思想(1)日本の風土と古代日本人の考え方
【テーマ】古代日本人は人間として、一番何を重んじたのか?

A:日本の風土と文化
☆和辻哲郎(1889-1960)『風土』による風土的類型
├☆モンスーン型(東・南アジア)…自然の恵みと猛威⇒受容的・忍従的…汎神論
│   ○日本…台風、大雪⇒戦闘的・激情的、淡白・あきらめがよい
├☆砂漠[沙漠]型(アラビア)…過酷な自然⇒対抗的・戦闘的…統率者の存在、一神教
└☆牧場型(ヨーロッパ)…従順な自然を支配⇒合理的・計画的…科学

B:☆村落共同体  *人里から遠い=辺境の地=神の世界=死の世界
【図:村落共同体】

cf. ☆柳田国男(1875-1962)『遠野物語』『先祖の話』
cf. ☆折口信夫(1887-1953)…神=☆まれびと(客人):外部からやってくる存在

C:古代日本人の考え方
☆八百万の神…畏怖・畏敬の対象←万物に神霊が宿っている(☆アミニズム[aminism])
  ↓立ち現れる
 ☆崇り神:人々の想像を超えたはたらきを持つ。
  └☆祟り:「神が立ち現れること」→「災厄を起こすこと」
   └⇒☆祭祀(神を酒食を供するなどしてもてなす儀礼)で神の要求を満たす→神が恵みを与える。

▼祭祀〔☆『古事記』(◎712)☆『日本書紀』(◎720)…神代神話より〕
┏☆高天原(神々の世界)━━━┓
┃   〔神々〕       ┃
┃  祭祀↑↓降臨      ┃
┃☆アマテラス大神      ┃…祀る神・祀られる神である→伊勢神宮に奉祀
┗━━祭祀↑↓神々の意を告げる┛
     人々

▼禊・穢れ〔『古事記』『日本書紀』…神代神話より〕
☆イザナキの命・☆イザナミの命→☆葦原中国(地上)をつくる。
   │      └死す→葦原中国は整備途中段階
   │       ↓
   │  ☆黄泉国(死後の世界。穢れた地下の国)の神
   └→向かう→┤
   逃げ下りる←┘…☆穢れ
   ↓
☆禊:穢れを水で洗い清めること……cf. 流し雛の習俗
├左目→アマテラス大神生まれる
└鼻→☆スサノヲの命生まれる
⇒●〈死=生の根源〉

☆清明心(清き明き心):神に対し欺き偽ることがない心(⇔濁き暗き心:私心)
⇒●清明心に基づく倫理観は、正直や誠など、その後さまざまに形を変えながらも、日本人の倫理観の根底にずっと生き続けていった。
▼清明心・罪・祓ひ(祓へ)〔『古事記』『日本書紀』…神代神話より〕
・アマテラス大神、スサノヲの命に清明心を持っているか尋ねる。
→スサノヲの命、☆うけひを行い証明
・スサノヲの命、高天原で暴れる…☆罪:祭祀を妨げる行為。共同体の安穏を脅かす行為。
→スサノヲの命、☆祓ひ(祓へ)で罪を償う…つめやあごひげを切り、物品を供え、高天原から追放された。

☆うけひ:神の意思のしるしを乞いうける呪術。
☆罪・穢れ:神や共同体を脅かす道徳的な悪。
☆祓ひ(祓へ):罪の代償物を出すことで罪や穢れから身を清めること。

【参考文献・参考URL】
神野志隆光著(1999)『古事記と日本書紀――「天皇神話」の歴史』、講談社現代新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]37. 西洋現代思想(5)20C後半以降の現代思想の潮流

37. 西洋現代思想(5)20C後半以降の現代思想の潮流
【テーマ】〈他者との関わり〉で基盤となるものを、どのように考えたのだろうか?

A:☆レヴィナス(Emmanuel Levinas、1905-1995、リトアニア):フランスの哲学者。ナチスのユダヤ人収容所での経験を基に、倫理に関する独自の哲学を展開。主著『全体性と無限』『時間と他者』。
○他者…☆他性(自分と決して同じではない性質。自己を無限に超越する)を持つ存在⇒他性は☆顔に表れる。
○西洋近代哲学…他者を自己の意識の中へ同化しようとする働き=☆全体性→異質な他者を同化・排除(…ナチス)。
●他性は全体性を超越し、顔が自身を他者との関係に引きずり出す=倫理や宗教の場面

B:☆ポストコロニアニズム:15C以降の西洋近代史を植民地帝国主義の歴史とし、西洋近代思想の西洋中心主義が植民地帝国主義を正当化した過程を明らかにする。
☆サイード(Edward Wadie Said、1935-2003、アメリカ):パレスチナ系の文学研究者。主著『オリエンタリズム』。
☆オリエンタリズム:西洋近代社会から見た、アジアや中東への誤解や偏見に基づく理解。

C:☆ハンナ=アーレント(Hannah Arendt、1906-1975、ドイツ):政治学者。反ナチス運動に協力し、アメリカに亡命。主著『全体主義の起源』『人間の条件』『カント政治哲学講義』。
○人間の活動
├]働(labor):生命維持のための活動。
├∋纏(work):文化を作る活動。
└3萋亜action):私的領域から解放され、政治の公的空間で言葉により自由に討議し、公的領域(公共性)を作る活動⇒他者へ自分を表現し、リアリティを感じる場←cf. ギリシアのポリス
⇒●近代化・個人化に伴う私的領域の拡大が、公的領域を衰退させる。その結果、いかなる集団にも属さない個人の集まりである大衆(アトム化された大衆)は孤独感に苛まれ、帰属意識を求めてファシズムなどの全体主義に簡単に吸収される⇒私的領域をも破壊へ。

D:政治哲学…☆正義論:正義(justice)・公正(fairness)という観点から社会の構想や倫理学的問題にアプローチする議論。
☆ロールズ(John Rawls、1921-2002、アメリカ):政治学者・倫理学者。リベラリズムの立場から正義を考察。主著『正義論』『公正としての正義』『政治的リベラリズム』。
☆「公正としての正義(justice as fairness)」の実現のため、思考実験を経て正義の二原理を導出…万人に「無知のヴェール」を被せ、社会的にどのような立場になるか分からないとき、公正な配分を可能にするため、自分が最も社会的に最悪の状況に陥ることを考えて、そのような状況になるのを避けるためのルールを考えるはずだ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
☆正義の二原理:以下の二つのことを満たさなければ、正義とは言えない(=不正)。
●第一原理 各人は基本的な自由の最も広い体系の対する平等な権利を持つべきであるが、このような自由の体系は他者の同様の体系と両立しなくてはならない(=平等な自由の原理)。
●第二原理 社会的・経済的不平等は次の二つの条件を満たしていなければならない。
(a)機会の公正な均等という条件の下で全員に開かれている公職や地位に伴うこと(=機会の公正な均等原理)。
(b)社会の最も恵まれない人の状況を改善すること(=格差原理)。

☆セン(Amartya Sen、1933-、インド):経済学者。1998年にアジア人初のノーベル経済学賞受賞。主著『不平等の再検討』『貧困と飢餓』。
○経済成長し、資金や食料など援助が行われているのに、なぜ貧困や飢餓がなくならないか?⇒●貧困や飢餓の克服には、☆ケイパビリティ(capablity;潜在能力:各人がよりよい生を自ら選べる自由)の開発と発展が不可欠。
●「善き生(well-being)」の基準=生き方の選択可能性の幅
▲潜在能力とは、「人が善い生活や善い人生を生きるために、どのような状態にありたいのか、そしてどのような行動をとりたいのかを結びつけることから生じる機能の集合」…[例]よい栄養状態にあること、健康な状態を保つこと、幸せであること、自分を誇りに思うこと、教育を受けている、字が読めること、自由に話すことができること、早死しないこと、社会生活に参加できること、人前で恥ずかしがらずに話ができること、愛する人のそばにいられること、などなど…。

▲☆マイケル=サンデル(Michael J. Sandel、1953-):政治哲学者。コミュニタリアニズムの立場から正義を考察。主著『リベラリズムと正義の限界』『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』。…共通善による正義の構想。
▲リベラル=コミュニタリアン論争(1980年代アメリカ〜)→終息⇒多元的価値観を包摂した共通善に基づくリベラル的正義の構想を模索中。

【参考文献・参考URL】
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』、岩波ジュニア新書.
藤本一勇・清家竜介・仲正昌樹・北田暁大・毛利嘉孝(2007)『現代思想入門――グローバル時代の「思想地図」はこうなっている!』、PHP研究所.
熊野純彦(2006)『西洋哲学史――近代から現代へ』、岩波新書.
仲正昌樹(2005)『日本とドイツ 二つの戦後思想』、光文社新書.
仲正昌樹(2006)『日本とドイツ 二つの全体主義――「戦前思想」を書く』、光文社新書.
仲正昌樹(2007)『思想の死相――知の巨人は死をどう見つめていたのか』、双風舎.
レヴィナス著、熊野純彦訳(2005)『全体性と無限(上)』、岩波文庫.
レヴィナス著、熊野純彦訳(2006)『全体性と無限(下)』、岩波文庫.
エマニュエル=レヴィナス著、原田佳彦訳(1986)『時間と他者』、法政大学出版局.
熊野純彦(1999)『レヴィナス入門』、ちくま新書.
港道隆(1997)『現代思想の冒険者たち 16 レヴィナス――法‐外な思想』、講談社.
エドワード=W=サイード著、今沢紀子訳(1993)『オリエンタリズム〈上〉』、平凡社ライブラリー.
エドワード=W=サイード著、今沢紀子訳(1993)『オリエンタリズム〈下〉』、平凡社ライブラリー.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子・早尾貴紀訳(2002)『戦争とプロパガンダ』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2002)『戦争とプロパガンダ2――パレスチナは、いま』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2003)『イスラエル、イラク、アメリカ――戦争とプロパガンダ3』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2003)『裏切られた民主主義――戦争とプロパガンダ4』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、中野真紀子訳(2005)『オスロからイラクへ――戦争とプロパガンダ2000-2003』、みすず書房.
エドワード=W=サイード著、島弘之訳(2003)『パレスチナとは何か』、岩波現代文庫.
加藤尚武(2003)『戦争倫理学』、ちくま新書.
塚原史(2000)『人間はなぜ非人間的になれるのか』、ちくま新書.
藤原帰一(2001)『戦争を記憶する――広島・ホロコーストと現在』、講談社現代新書.
岡真理(2000)『思考のフロンティア 記憶/物語』、岩波書店.
ハンナ=アレント著、志水速雄訳(1994)『人間の条件』、ちくま学芸文庫.
ハンナ=アーレント著、ロベルト=ベイナー編集、仲正昌樹訳(2009)『カント政治哲学講義』、明月堂書店.
仲正昌樹(2009)『今こそアーレントを読み直す』、講談社現代新書.
ロールズ著、川本隆史・福間聡・神島裕子訳(2010)『正義論』、紀伊国屋書店(改訂版).
アマルティア=セン著、池本幸夫ほか訳(1999)『不平等の再検討――潜在能力と自由』、岩波書店.
アマルティア=セン著、黒崎卓・山崎幸治訳(2000)『貧困と飢餓』、岩波書店.
アマルティア=セン著、大石りら訳(2002)『貧困の克服――アジア発展の鍵は何か』、集英社新書.
マイケル=サンデル著、菊池理夫訳(2009)『リベラリズムと正義の限界』、勁草書房.
マイケル=サンデル著、鬼澤忍訳(2010)『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』、早川書房.
飯島昇蔵(2001)『社会科学の理論とモデル 10 社会契約』、東京大学出版会.
大川正彦(1999)『思考のフロンティア 正義』、岩波書店.
小川仁志(2010)『はじめての政治哲学――「正しさ」をめぐる23の問い』、講談社現代新書.
川本隆史(1997)『現代思想の冒険者たち 23 ロールズ――正義の原理』、講談社.
川本隆史(2005)『現代思想の冒険者たちselect ロールズ――正義の原理』、講談社.
姜尚中(2001)『思考のフロンティア ナショナリズム』、岩波書店.
姜尚中(2006)『愛国の作法』、朝日新書.
小林和之(2004)『「おろかもの」の正義論』、ちくま新書.
小林正弥(2010)『サンデルの政治哲学――〈正義〉とは何か』、平凡社新書.
齋藤純一(2000)『思考のフロンティア 公共性』、岩波書店.
齋藤純一(2005)『思考のフロンティア 自由』、岩波書店.
千葉眞(2000)『思考のフロンティア デモクラシー』、岩波書店.
仲正昌樹(2003)『不自由論――何でも「自己決定」の限界』、ちくま新書.
宮崎哲弥(2010.7.21[水])「サンデルの問い 現実を「私たち」から考える」、朝日新聞.
森村進(2001)『自由はどこまで可能か――リバタリアニズム入門』、講談社現代新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]36. 西洋現代思想(5)20C後半以降の現代思想の潮流

36. 西洋現代思想(5)20C後半以降の現代思想の潮流
【テーマ】それぞれ、西洋中心主義(理性中心主義)のどこが問題だと主張したのか?

A:☆フランクフルト学派:1930年代はじめにドイツ・フランクフルトの社会研究所で研究した学者たち。
☆ホルクハイマー(Max Horkheimer、1895-1973、ドイツ):哲学者・社会学者。フランクフルトの社会研究所の初代所長。今ある社会の現状を実証的に分析する手法(実証主義・科学主義)を批判し、あるべき理念から現実を批判する実践的批判理論を展開。主著『啓蒙の弁証法』(←アドルノと共著)『理性の腐食』。
☆アドルノ(Theodor Wiesengrund Adorno、1903-1969、ドイツ):哲学者・社会学者。ホルクハイマーとともにフランクフルト学派の指導者。主著『啓蒙の弁証法』(←ホルクハイマーと共著)『否定弁証法』『権威主義的パーソナリティ』。
○近代の合理主義→自然(外なる自然)を科学技術で、内なる自然(人間の感情、欲望など)を道徳や教育で操作⇒「人間こそが理性的判断で自然や人間自身を支配する主体」⇒合理的な人間社会を形成⇒●合理的な社会が巨大化・複雑化⇒人間を合理的に支配・操作・管理…☆道具的理性(自然や人間を支配する単なる道具)
⇒☆啓蒙の弁証法:自然を支配するための道具的理性の伸長が人間への抑圧的支配へとつながる…近代合理主義(啓蒙)の自己展開が反文明的な「野蛮」(…ナチス)へ回帰する。

☆フロム(Erich Fromm、1900-1980、ドイツ):社会学者。歴史的に自由を獲得した個人が、その自由により孤独や不安を感じて悩み、むしろ自由を重荷と感じ、自由から逃げ出し服従を求める心理を分析。主著『自由からの逃走』『愛するということ』。
☆権威主義的パーソナリティ:アドルノやフロムが探究。他者の権威に盲従しつつ、自らの権威への服従を強要する性格→ファシズムの温床。

▲マルクーゼ(Herbert Marcuse、1898-1979、ドイツ):社会哲学者。高度に産業化した社会で画一的に管理され批判精神を失ったまま現状に適応している人間を一次元的人間と呼び、管理社会としての現代社会を批判。主著『理性と革命』『エロスと文明』『一次元的人間』。

☆ハーバーマス(Jurgen Habarmas、1929-、ドイツ):フランクフルト学派第二世代の社会学者。主著『公共性の構造転換』『コミュニケーション的行為の理論』『理論と実践』。
☆対話的理性:対等な立場で自由に話し合い、相互理解しつつ☆合意を作ろうとする理性(⇔道具的理性)。
☆コミュニケーション的合理性:平等で対等な立場での話し合いによって合意されたルール(…社会の構成員相互の行為を調整する)をつくる合理性。
⇔☆システム合理性:権力や貨幣などの制御メディア(人間の行為を調整する媒体)が、人間の行為を自動的に調整し社会システムを統合する合理性。

B:☆構造主義:人間の思考や行動を、それらを規定している、無意識的で社会的な普遍的構造から分析する立場。
☆ソシュール(Ferdinand de Saussure、1859-1913、スイス):言語学者。主著『一般言語学講義』。
○言語学を、個人が日々具体的なものを発話する行為・会話(palole;パロール)と、文章の組み立てを規定している言語構造(langue;ラング)に区分し、パロールを支えるラングを分析する構造言語学を唱える⇒●個々のパロールはラングの構造体系のルールに従うことで、初めて意味を持つ(…言語は記号体系のルールの中でのコードである)。
⇒言語構造が社会や文化体系を規定する⇒構造主義のモデルに。

☆レヴィ=ストロース(Claude Levi-Strause、1908-2009、フランス):文化人類学者。ソシュールの言語学を人類学に応用。構造主義の提唱者。主著『悲しき熱帯』『野生の思考』。
☆構造:構成要素のどれかが変化すると、他の全ての要素が変化するような要素から成り立つ体系。
○南米の諸部族へ行き実地調査⇒婚姻関係や神話にも未開社会特有の構造がある(☆野生の思考)=文明社会が野蛮と批判すること自体が野蛮(←自然との共生を破壊している)。
●西洋近代(理性中心主義)…理性的で自由である人間が主体的に社会や文化を作る。
⇔●構造主義…個人の主観的意識を超えた構造が社会や文化を規定する。構造の要素は〈差異〉の関係から成り立つ主体。

☆フーコー(Michel Foucault、1926-1984、フランス):哲学者。主著『狂気の歴史』『言葉と物』『監獄の誕生』『性の歴史』。
●西洋近代が、理性的主体としての人間を中心に据え、社会から逸脱するようなものを☆狂気として排除…監獄、軍隊、学校、病院などで人間を規律化・規格化⇒権力の管理に従順な人間を生産。
▲監獄…ベンサムが考案したパノプティコン(一望監獄)を例示。

C:☆分析哲学:現代英米哲学の主流の一つ。哲学的問題を表現する言語から問題を分析。
☆ウィトゲンシュタイン(Lutwig Wittgenstein、1889-1951、オーストリア):哲学者。ケンブリッジ大学でラッセル(Bertrand Rusell、1872-1990、イギリス)の記号論理学に影響を受ける。主著『論理哲学論考』『哲学探究』。
○前期…☆「語りえないものについては沈黙しなければならない」(『論理哲学論考』):言語と現実の事象は写像関係にあるので、神や道徳などは現実の事象と対応関係がないので言語で説明できない。〈語りえないもの=論理的に説明できないもの〉
○後期…☆言語ゲーム(『哲学探究』):日常会話されている言語も、他者と文法規則や生活習慣などを前提にして成り立ち、論理的言語関係の規則と同等のものである。言語ゲームのルールは日常生活の中に内在する。
▲トマス=クーン(Thomas Samuel Kuhn、1922-1996、アメリカ):科学史家。主著『科学革命の構造』。
☆パラダイム(paradigm):科学の考え方を支える、広く共有された理論的な枠組み。
●今ある科学の事実は現状のパラダイムから解釈したものであり、理論が変われば新たなパラダイムに組み替える(パラダイム=シフト)=☆科学革命

【参考文献・参考URL】
ホルクハイマー・アドルノ著、徳永恂訳(2007)『啓蒙の弁証法――哲学的断層』、岩波文庫.
ホルクハイマー著、山口祐弘訳(1987)『理性の腐蝕』、せりか書房.
アドルノ著、木田元・渡辺祐邦・須田朗・徳永恂・三島憲一・宮武昭訳(1996)『否定弁証法』、作品社.
アドルノ著、田中義久・矢沢修次郎訳(1998)『権威主義的パーソナリティ』、青木書店.
フロム著、日高六郎訳(1965)『自由への逃走』、東京創元社.
マルクーゼ著、南博訳(1958)『エロス的人間』、紀伊国屋書店.
ハーバーマス著、細谷貞雄・山田正行訳(1994)『公共性の構造転換――市民社会の一カテゴリーについての探究』、未来社.
ハーバーマス著、三島憲一訳(2000)『近代――未完のプロジェクト』、岩波現代文庫.
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』、岩波ジュニア新書.
藤本一勇・清家竜介・仲正昌樹・北田暁大・毛利嘉孝(2007)『現代思想入門――グローバル時代の「思想地図」はこうなっている!』、PHP研究所.
熊野純彦(2006)『西洋哲学史――近代から現代へ』、岩波新書.
仲正昌樹(2005)『日本とドイツ 二つの戦後思想』、光文社新書.
仲正昌樹(2006)『日本とドイツ 二つの全体主義――「戦前思想」を書く』、光文社新書.
仲正昌樹(2007)『思想の死相――知の巨人は死をどう見つめていたのか』、双風舎.
中岡成文(2003)『現代思想の冒険者たちSelect ハーバーマス コミュニケーション行為』、講談社.
齊藤純一(2000)『思考のフロンティア 公共性』、岩波書店.
ソシュール著、小林英夫訳(1972)『一般言語学講義』、岩波書店.
レヴィ=ストロース著、川田順造訳(2001)『悲しき熱帯 機戞中公クラシックス.
レヴィ=ストロース著、川田順造訳(2001)『悲しき熱帯 供戞中公クラシックス.
フーコー著、田村俶訳(1975)『狂気の歴史――古典主義時代における』、新潮社.
フーコー著、渡辺一民・佐々木明訳(1976)『言葉と物――人文科学の考古学』、新潮社.
フーコー著、田村俶訳(1977)『監獄の誕生――監視と処罰』、新潮社.
町田健(2004)『ソシュールと言語学――コトバはなぜ通じるのか』、講談社現代新書.
町田健(2003)『コトバの謎解き――ソシュール入門』、光文社新書.
橋爪大三郎(1988)『はじめての構造主義』、講談社現代新書.
渡辺公三(2003)『現代思想の冒険者たちSelect レヴィ=ストロース 構造』、講談社.
小田亮(2000)『レヴィ=ストロース入門』、ちくま新書.
桜井哲夫(2003)『現代思想の冒険者たちSelect フーコー 知と権力』、講談社.
中山元(1996)『フーコー入門』、ちくま新書.
ウィトゲンシュタイン著、橋本隆志訳(1979)『ウィトゲンシュタイン全集』、大修館書店.
ウィトゲンシュタイン著、野矢茂樹訳(2003)『論理哲学論考』、岩波文庫.
ウィトゲンシュタイン著、大森荘蔵訳(2010)『青色本』、ちくま学芸文庫.
永井均(1995)『ウィトゲンシュタイン入門』、ちくま新書.
鬼界彰夫(2003)『ウィトゲンシュタインはこう考えた――哲学的思考の全軌跡 1912-1951』、講談社現代新書.
飯田隆(2005)『現代思想の冒険者たちSelect ウィトゲンシュタイン 言語の限界』、講談社.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]35. 西洋現代思想(4)ヒューマニズム

35. 西洋現代思想(4)ヒューマニズム
【テーマ】暴力の否定がなぜ大きな運動につながったのか?

☆人道主義(humanitarianism):日本語で「ヒューマニズム」と一般的に解されるもの(cf. 人文主義[ルネサンス])。暴力や抑圧、差別、不正など被抑圧的状況からの人間性の解放を主張する。

A:シュヴァイツァー(Albert Schweitzer、1875-1965、フランス):神学者・医師・哲学者・音楽家。1952年ノーベル平和賞受賞。1957年原水爆実験禁止をアピール。主著『水と原生林のはざまで』『文化と倫理』。
○赤道アフリカ(現在のガボン)のランバレネで病院を建てて医療活動→全ての生命が生きようとする意志を持ち、自然にはそのような生命が満ち溢れていると実感。
⇒☆「生命への畏敬」:全ての生命あるものを価値のあるものとして尊重。

B:マザー=テレサ(Mother Teresa、1910-1997、マケドニア):カトリック修道女。インド・カルカッタのスラム街などで活動。孤児・病人・困窮者などへの献身的な奉仕活動を展開し、キリスト教「神の前の平等」・「隣人愛」を実践。「孤児の家」「死を待つ人の家」などを作る。1979年ノーベル平和賞受賞。
○「この世の最大の不幸は、貧しさや病ではなく、むしろそのことによって見捨てられ、誰からも自分が必要とされていないと感じることである。」

C:ガンディー(Mohandas Karamchand Gandhi、1869-1948、インド):政治家。尊称マハトマ(Mahatma;「偉大なる魂」)。インドの独立運動を指導。「☆スワラージ(自治・独立)、☆スワデーシー(国産品愛用)」の綱領を掲げイギリスへの抵抗運動を展開。
☆サティヤーグラハ(真理把持):ガンディーの反英抵抗運動の呼び名。真理を把握し、それを自分と社会の中で具現化すること⇒生命尊重を絶対的真理の一つとして保持すること。
…具体的実践は☆ブラフマチャリヤー(自己浄化)・☆アヒンサー(非暴力・不殺生)。
⇒インドの宗教的伝統に由来=●一切の生命は同胞であり、殺さず、傷つけず、殺さず、肉食を禁じ、あらゆる暴力を否定する。

D:キング(Martin Luther King, Jr、1929-1968、アメリカ):キリスト教牧師。ガンディーの非暴力主義に感銘し、黒人解放運動を指導。1950〜1960年代に公民権運動を展開。1955年バス=ボイコット運動にて非暴力主義で人種隔離政策撤廃に成功。1963年ワシントンで「仕事と自由のための大行進」を行い、世論を喚起し、「I Have a Dream.」で有名なスピーチを行う。1968年演説中に暗殺される。

【参考文献・参考URL】
シュヴァイツァー著、吉野源三郎訳(1982)『君たちはどう生きるか』、岩波文庫.
シュヴァイツァー著、浅井真男・国松孝二訳(1966)『水と原生林のあいだに』、白水社.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]34. 西洋現代思想(3)実存主義

34. 西洋現代思想(3)実存主義
【テーマ】それぞれの実存主義の違いは何か?〜「リア充(リアルで充実した生)」はどうすれば得られるのか?

A:☆ハイデッガー(Martin Heidegger、1889-1876、ドイツ):哲学者。☆フッサール(Edmund Husserl、1859-1938、ドイツ)の☆現象学(Phaenomenologie)に影響を受け、存在論を展開。主著『存在と時間』『ヒューマニズムについて』『形而上学とは何か』『哲学への寄与』。
▲現象学(Phaenomenologie):外界に存在するものについての判断を停止(☆エポケー;εποκη;「判断停止」)し、意識に現れた現象をありのままに記述しようとする。「事象そのものへ」を回帰と意図。
☆現存在(Dasein):「存在とは何か」という存在への問いを抱く主体である人間の在り方。
├ヾに「存在する」という事実の中に投げ入れられている(☆被投性[Geworfenheit])。
├∪こΔ涼罎罵諭垢米散馘存在者を利用し、配慮し、それらと交渉しながら存在する。
│ (☆世界‐内‐存在[In-der-Welt-sein])
├F常世界では、「誰でもよい誰か」(或いは「誰でもない誰か」)として主体性が埋没し、
│ 平均的・画一的で匿名の非本来的な在り方(☆ひと[Das Man])へ頽廃。
└ぁ死への存在(Sein zum Tode):死を自覚できる存在だが、死がいつ訪れるか分からず、☆不安(Angst)がつきまとう→死を隠蔽し、気晴らし⇒☆ひと(Das Man)へ頽廃。
⇒自ら引き受けるしかない死と向き合うことで、Daseinは有限的な「時間的存在」だと自覚(=ハイデッガーの「実存(=本来の自己)」)。

B:☆サルトル(Jean-Paul Sartre、1905-1980、フランス):哲学者・文学者。主著『存在と無』『嘔吐』『実存主義はヒューマニズムである』『弁証法的理性批判』。
☆「実存は本質に先立つ」(『実存主義はヒューマニズムである』):人間は,泙困海寮い紡減澆掘兵詑検法↓¬ね茲惻らを投げ出し(☆投企)、自由な決断で自己が何であるか(本質)を定義する。 cf. ペーパーナイフの比喩
▲即自存在と対自存在
☆即自存在:それ自体で存在するもの。固定されたもの。
☆対自存在:常に自己を意識し、過去の自己の在り方から抜け出して、未来へ向かって自己を形成する在り方=☆投企的存在。
☆対他存在:他者の視線にさらされた実存。自他互いに視線を向けられつつ自由を求める緊張関係。
▲↑メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty、1908-1961、フランス)はこの対立図式を批判…人間の身体は意識の主体であり、同時に客体である二面性を持つ。
☆「人間は自由の刑に処せられている」(『実存主義はヒューマニズムである』):人間が自由であるが故に、人間の行為を正当化する理由や拠り所を持たない。そのため、人間は自由から逃れられず、自己の行為・決断は自分が全面的に☆責任を負わねばならない。
☆アンガージュマン(engagement;社会参加):自己を社会の状況の中へ投げ入れ、その中に自己を拘束すること⇒自己の自由な決断は、他者・全人類の未来のために、責任を持って、社会の状況を作りかえる⇒マルクス主義への接近

▲☆ボーヴォワール(Simone de Beavoir、1908-1986、フランス):哲学者・文学者。サルトルの妻(契約結婚)。主著『第二の性』(→「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」…女性という存在は社会的習慣やタブーなどにより人為的に作られたもの)。
▲☆カミュ(Albert Camus、1913-1960、フランス):文学者。主著『異邦人』『シーシュポスの神話』『ペスト』。人生の不条理(absurdite)を直視し生きる実存を描く。

【参考文献・参考URL】
フッサール著、細谷恒夫・木田元訳(1995)『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』、中公文庫.
フッサール著、浜渦辰二訳(2001)『デカルト的省察』、岩波文庫.
フッサール著、長谷川宏訳(2003)『現象学の理念』、作品社.
フッサール著、谷徹訳(2004)『ブリタニカ草稿 現象学の核心』、ちくま学芸文庫.
メルロ=ポンティ、滝浦静雄・中村文郎・砂原陽一訳(2007)『心身の合一――マールブランジェとビランとベルクソンにおける――』、ちくま学芸文庫.
竹田青嗣(1989)『現象学入門』、NHKブックス.
竹田青嗣(2004)『現象学とは〈思考の原理〉である』、ちくま新書.
谷徹(2002)『これが現象学だ』、講談社現代新書.
マルティン=ハイデッガー著、細谷貞雄訳(1994)『存在と時間〈上〉』、ちくま学芸文庫.
マルティン=ハイデッガー著、細谷貞雄訳(1994)『存在と時間〈下〉』、ちくま学芸文庫.
木田元(1993)『ハイデガーの思想』、岩波新書.
古東哲明(2002)『ハイデガー=存在神秘の哲学』、講談社現代新書.
サルトル著、松浪信三郎訳(2007)『存在と無――現象学的存在論の試み 機戞△舛ま学芸文庫.
サルトル著、松浪信三郎訳(2007)『存在と無――現象学的存在論の試み 供戞△舛ま学芸文庫.
サルトル著、松浪信三郎訳(2008)『存在と無――現象学的存在論の試み 掘戞△舛ま学芸文庫.
サルトル著、白井浩司訳(1994)『嘔吐』、人文書院.
サルトル著、伊吹武彦訳(1996)『実存主義とは何か』、人文書院.
ホーヴォワール著、青柳瑞穂訳(1980)『人間について』.
カミュ著、窪田啓作訳(1954)『異邦人』、新潮文庫.
カミュ著、清水徹訳(1969)『シーシュポスの神話』、新潮文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]33. 西洋現代思想(3)実存主義

33. 西洋現代思想(3)実存主義
【テーマ】それぞれの実存主義の違いは何か?〜「リア充(リアルで充実した生)」はどうすれば得られるのか?

☆実存主義(existentialism):19世紀の合理主義や実証主義に対し、そのような抽象的・客観的思考ではとらえられない「今、ここにいる自分」という現実の個別的・具体的存在(☆実存[existence])の存在を探求する思想。自己のあり方を自ら選択し決断・確立する☆主体性の回復をめざす。
▲実存主義のバリエーション
├有神論的実存主義:神・超越者と関わる主体的決断から実存の確立を説く。
│   …キルケゴール、ヤスパース、マルセル
└無神論的実存主義:神の存在を否定し、人間存在の探求から主体的な実存の確立を説く。
    …ハイデッガー、サルトル、ホーヴォワール、メルロ=ポンティ
▲背景…◎近代…理性への信頼→科学技術発達、市民革命、産業革命→大衆化、社会組織の巨大化→管理社会→人間本来のあり方が見失われ、埋没

A:☆キルケゴール(Soeren Aabye Kierkegaard、1813-1855、デンマーク)…思想家。実存主義の創始者。主著『死に至る病』『あれか、これか』『不安の概念』『おそれとおののき』。
☆実存:「今、ここ」を生きる主体的な自己。
○ヘーゲル哲学を批判…矛盾するものを「あれも、これも」統一し、客観的真理を求める。
⇒客観的真理には「自己の実存」が抜け落ちている。
☆主体的真理:「私にとって真理であるような真理」「私がそのために生き、そして死にたいと思うようなイデー(真理)」(『日記』)=「どう生きるべきか」という問いつつ、『あれか、これか』の二者択一の選択を自らの全存在を賭けて行う決断により獲得する=個別的・具体的真理。
☆実存の三段階…契機は☆絶望(神との関係を失い、本来の自己を失った状態)。
├ 美的実存:感覚的享楽で満たす生き方⇒倦怠感・虚無感に苛まれ絶望。
├◆宗教的実存:自己の良心に従い道徳的に生きる⇒自己の有限性や罪悪感に絶望。
└☆宗教的実存:絶望の中で神の前にただ1人☆「単独者」として立ち、神を信仰する⇒真の自己を獲得。

B:☆ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche、1844-1900、ドイツ):哲学者。主著『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼方』『力への意志』『悲劇の誕生』。
◎19Cキリスト教の没落を退廃(デカダンス)と見る。
⇒●キリスト教道徳=弱者を甘やかし(…隣人愛、同情、禁欲など)、強者への☆ルサンチマン(ressentiment;怨恨)に満ちた☆奴隷道徳⇒人間が本来持っている価値を埋没=☆「神は死んだ」(『ツァラトゥストラはこう語った』)
 ↓↓↓ 「死んだ〈キリスト教の神〉」に代わって… ↓↓↓
☆超人(Uebermensch): 「力(権力)への意志」(己をより高め、強くたくましく生きようとする意志)を持ち、新たな価値を創造しようとする者。△海慮充造蓮永劫回帰(無意味なことが永遠に繰り返されること)だと認識し、敢えてそれを肯定し生きる(☆運命愛)者。
☆ニヒリズム(Nihilismus;虚無主義):伝統的価値観や権威を否定する立場。
├×☆受動的ニヒリズム:人生の目的を失い、刹那的享楽や絶望に篭る態度。
└○☆能動的ニヒリズム:永劫回帰の現実に「力への意志」で新たな価値を創造する態度。

C:☆ヤスパース(Karl Jaspers、1883-1969、ドイツ):精神病理学者→フッサールの現象学の影響→哲学者(理性と愛に基づく実存哲学を確立)。主著『哲学』『理性と実存』。
☆限界状況(Grenzsituation):死・苦悩・責め・争いなど。人間や科学の力でもどうすることもできない状況⇒挫折⇒自己の有限性を自覚、☆超越者(包括者)との出会い⇒☆実存(本来の自己に目覚めた存在)へ至る(「実存解明」←理性的判断が必要)←☆実存的な交わり:実存相互の交わり…☆「愛しながらの戦い」
▲枢軸時代(Achsen-zeit)(『歴史の起源と目標』):国家や全体性に埋没していた人間が個人として自覚し、精神に目覚める時代
…◎B.C. 500前後(B.C. 800頃-B.C. 200頃) 諸子百家、仏陀、イスラエルの預言者、ギリシアの哲学者らが登場。
→現代は「第二の枢軸時代」?

【参考文献・参考URL】
▲岩波文庫の出版が古いのだが、「キルケゴール」で覚えたほうがよい。
キェルケゴール著、斎藤信治訳(1957)『死に至る病』、岩波文庫.
キェルケゴール著、斎藤信治訳(1979)『不安の概念』、岩波文庫.
キルケゴール著、桝田啓三郎訳(1996)『死に至る病』、ちくま学芸文庫.
ニーチェ著、氷上英広訳(1967)『ツァラトゥストラはこう言った(上)』、岩波文庫.
ニーチェ著、氷上英広訳(1970)『ツァラトゥストラはこう言った(下)』、岩波文庫.
▲『ツァラトゥストラ』でも通じなくはないが、『ツァラトゥストラはこう言った(かく語りき)』で覚えたほうがよい。
ニーチェ著、丘澤静也訳(2010)『ツァラトゥストラ〈上〉』、光文社古典新訳文庫.
ニーチェ著、丘澤静也訳(2011)『ツァラトゥストラ〈下〉』、光文社古典新訳文庫.
ニーチェ著、木場深定訳(1964)『道徳の系譜』、岩波文庫.
ニーチェ著、中山元訳(2009)『道徳の系譜』、光文社古典新訳文庫.
ニーチェ著、西尾幹二訳(1990)『この人を見よ』、新潮文庫.
ヤスパース著、草薙正夫訳(1954)『哲学入門』、新潮文庫.
ヤスパース著、橋本文夫訳(1998)『戦争の罪を問う』、平凡社ライブラリー.
ヤスパース著、マルセル著、山本信責任編集、林田新二・渡辺二郎・小倉志祥訳(1980)『世界の名著 75 ヤスパース・マルセル』、中公バックス.←ヤスパース「哲学」、マルセル「存在と所有」が所収されている.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]32. 西洋現代思想(2)社会主義

32. 西洋現代思想(2)社会主義
【テーマ】社会主義の理想と現実はどうなっているのか?

☆資本主義:私有財産を基礎に、自由競争原則で、自由な経済活動を保証する制度。
☆社会主義:私益の追求を抑え、生産手段を公有化して万人の利益のために計画的に生産・管理し、平等に分配すべきと主張する説。

A:☆「空想的社会主義」(←マルクス、エンゲルスがつけた名称)
(1)背景
◎18C後半 産業革命    ┌→資本家…巨万の富
→資本主義が強化→機械の導入┴→労働者…劣悪な労働条件
⇒●人道主義的立場から批判、平等な共同社会を理想
(2)社会主義者たちの構想
☆サン・シモン(仏):貴族や地主でなく、産業者(資本家・労働者など)による社会を!
☆フーリエ(仏):産業社会=統一を欠く嫌悪社会、ファランジュ(農村協同組合的社会)を構想。
☆ロバート・オーウェン(英):ニューラナーク紡績工場で労働条件改善・労務管理の近代化に成功。米国ニューハーモニー村建設→失敗。
(3)科学的分析・具体的手段の欠如⇒挫折

B:☆「科学的社会主義」
☆マルクス(Karl Heinlich Marx、1818-1883、ドイツ):経済学者・哲学者。主著『資本論』『経済学・哲学草稿』『哲学の貧困』『ドイツ=イデオロギー』『共産党宣言』(エンゲルスと共著)。
☆エンゲルス(Friedlich Engels、1820-1895、ドイツ):社会主義者・経済学者。主著『共産党宣言』(マルクスと共著)『空想から科学へ』。

(1)☆労働の疎外
●人間の本質=☆類的存在:☆労働を通じて他者との関わりの中で生きる存在。
☆労働:ー然を加工して生産物を作り、他者との人間的なつながりを作る。
●資本主義社会での労働=労働が生産の手段として強いられる(☆労働の疎外[疎外された労働])
├\源妻からの疎外:自ら生産したものが自分のものにならない。
├∀働そのものの疎外:労働自体が自分のためでなくなる。
├N狹存在からの疎外:労働者の社会的連帯が失われる。
└た祐屬らの疎外:人間本来のあり方から疎外される。
☆疎外(自己疎外;Entfremdung):人間の本質や人間性が疎遠になり、非人間的に状態に陥ること。

(2)☆唯物史観(史的唯物論) ▲唯物論:物質の根源性を主張する立場(⇔観念論)。
・ヘーゲル…精神の自己運動(=原動力)で弁証法的に世界が発展〜観念論
●マルクス〜物質的な☆生産力(労働手段と労働力でものをつくる能力)を原動力に弁証法的に世界が発展=唯物史観(史的唯物論)
●唯物史観
☆上部構造…政治・制度・思想・文化・人々の意識〜固定化しやすい
  ↑
 (規定)
  ↑
☆下部構造…生産力と☆生産関係とのバランスに基づく経済(生産様式)。衣食住(生活)。
┗⇒生産力が増大すると、生産関係とのバランスが矛盾⇒☆階級闘争⇒革命
●「人間の意識がその存在を規定するのではなく、人間の社会的存在がその意識を規定する」(マルクス『経済学批判』序言)
※生産関係(=誰が生産手段を所有するかで決まる)の段階…原始共産制→奴隷制(奴隷所有者VS奴隷)→封建制(領主VS農奴)→資本主義(資本家VS労働者)→社会主義
∴資本主義から社会主義へ移るのは歴史の必然…社会主義革命(プロレタリア革命)…☆労働者階級(Proletariat)による☆共産制(生産手段の公有)⇒社会主義による人間性の回復へ

C:社会主義のその後
◎19C後半 帝国主義・労働者の参政権獲得(←マルクスの予想外)⇒実情に合わせ修正
☆社会民主主義:資本主義の枠内で、議会活動(労働者階級の多数派議席獲得)により社会改善を図る。武力革命やプロレタリア独裁を否定。
└☆ベルンシュタイン(1850-1932):ドイツ社会民主党の指導者の一人。主著『社会主義の諸前提と社会民主党の任務』。
☆民主社会主義:社会民主主義とほぼ同意。社会保障制度に重点。
└☆フェビアン協会:イギリスの社会主義組織。1884年設立。☆ウェッブ夫妻、バーナード=ショーが代表的指導者⇒1900年のイギリス労働党結成に影響。
☆マルクス・レーニン主義
└☆レーニン(1870-1924): ロシア革命の指導者。主著『帝国主義論』(資本主義が最高の段階「帝国主義」に達し、列強の世界戦争へ至る必然性を説く)。
…階級対立がなくならない限り社会主義は完遂しない⇒プロレタリアート独裁が必要。
→◎1985- ☆ゴルバチョフの☆ペレストロイカ→◎1991 ソ連崩壊
☆三民主義(☆孫文):民族主義・民権主義・民生主義
→☆毛沢東→◎1949 中華人民共和国成立

【参考文献・参考URL】
東浩紀・北田暁大編(2008)『思想地図 vol.2 特集 ジェネレーション』、NHKブックス別冊.
佐伯啓思(1993)『「欲望」と資本主義――終わりなき拡張の論理』、講談社現代新書.
塩原俊彦(2003)『ビジネス・エシックス』、講談社現代新書.
スラヴォイ=ジジェク著、栗原百代訳(2010)『ポストモダンの共産主義―─はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』、ちくま新書.
仲正昌樹(2004)『お金に「正しさ」はあるのか』、ちくま新書.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]31. 西洋現代思想(1)プラグマティズム

31. 西洋現代思想(1)プラグマティズム
【テーマ】プラグマティズムは倫理的にどこまで認められるか?

☆プラグマティズム(pragmatism):行為の実際的な効果に基づいて、観念や理想を理解しようとする考え。母胎は☆フロンティア精神(開拓者精神)。

A:☆パース(Charles Sanders Pierce、1839-1914、アメリカ)…☆プラグマティズム(pragmatism)を提唱。「形而上学クラブ」を結成。ジェームズらと研究。 ▲πραγμα;行為、実践
●あらゆる概念の意味は、その概念が引き起こす行為や結果に求めるべき。

B:☆ジェームズ(William James、1842-1910、アメリカ)…パースの思想を発展。主著『心理学原理』『プラグマティズム』。
●知識や思想の真理の真偽は「実生活における有用性」によって決まる。
⇒プラグマティズム=☆「実用主義」…普遍的・絶対的真理を否定、実践や行為に照らして真理を認定する相対主義。

C:☆デューイ(John Dewey、1859-1952、アメリカ)…生物進化論の影響を受け、人間と環境との関係を重視。主著『哲学の改造』『民主主義と学校』『学校と社会』。
●人間の知性…環境に適応し、よりよく生きるための道具・手段。
⇒☆道具としての知性がよりよい環境への適応を実現させる=☆道具主義
⇒☆創造的知性(実験的知性)で生活・社会を改良し、理想的な民主主義社会をつくる。↑そのため、教育の重要性を説く。
⇒☆問題解決学習:実生活で問題を見つけ自ら解決する学習…「為すことによって学ぶ(learning by doing)」

【参考文献・参考URL】
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』、岩波ジュニア新書.
ウィリアム=ジェームズ著、桝田啓三郎訳(1957)『プラグマティズム』、岩波文庫.
ジョン=デューイ著、清水幾太郎・清水礼子訳(1968)『哲学の改造』、岩波文庫.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]30. 西洋近代思想(6)功利主義

30. 西洋近代思想(6)功利主義
【テーマ】幸福は本当に道徳の原理とならないのか?

A:【補遺】☆アダム=スミス(Adam Smith、1723-1790、イギリス)
○古典派経済学者。自由放任主義。主著『諸国民の富(国富論)』『道徳感情論』。
☆自由放任(Laissez faire;レッセ=フェール):各自の利己心による経済活動は☆「神の見えざる手」により価格が自動調整され、各人がそれぞれ自らの欲望を追求することが、結果的に公益を増やすことになる。
▲ただし、第三者である「公平な観察者(imperial inspector)」の☆共感(sympathy…他者の幸福や不幸を共に感じることができる道徳的な感情)が得られる範囲内でのみ!
└各人が道徳感情(moral sense)を持っていると前提。

☆功利主義(utilitarianism):行為の善悪の判断を、行為が幸福や快楽を与えるかによって判断する倫理観。

B:☆ベンサム(Jeremy Bentham、1748-1832、イギリス)
○功利主義の確立者。主著『道徳および立法の諸原理序説』、『統治論断片』。
●快楽(幸福)を増大させ苦痛を減少させるもの=善…☆功利の原理
 └善悪の基準は☆utility(効用、功利性)⇒行為の動機より結果を重視
☆快楽計算…以下の基準をもとに快楽の度合いを求める。
 ├ゞさ:強い快をもたらすか否か。[例]歯医者に行くか…。
 ├∋続性:どの程度続くか。[例]治療するか痛み止めを打つか…。
 ├3亮太:どの程度確実であるか。
 │     [例]歯医者に行って直すほうが行かずに直すよりも確実に直る…。
 ├け鷆畧:目的に達するための遠さ。[例]歯医者で長く行くより痛み止めを打った…。
 ├ヂ人誉:行為によりどのくらい善い結果が生まれるか。
 │     [例]歯医者に行けば痛みはずっと無いままに…。
 ├純粋性:副作用がないか。[例]歯医者で治療すれば副作用はない…。
 └範囲:どれだけ多くの人に幸福が渡るか。
⇒∴(幸福)=(快楽)+(苦痛)(⇒☆量的功利主義)
○利己的な本性を持つ人間の幸福最大化のため、☆制裁(sanction)が必要。
→☆外的制裁
 ├ー然的制裁…[例]食べすぎは気持ち悪くなる。
 ├∪治的制裁…[例]法違反者に課す。
 ├F仔租制裁…[例]ルールを破ったとしても、後悔の念にさらされる。
 └そゞ掬制裁…[例]罰が当たる。
☆「最大多数の最大幸福(the greatest happiness for the greatest number)」…「最大多数の最大幸福は、道徳と立法の基盤である(The greatest happiness of the greatest numbers is the foundation of morals and legislation.)」⇒多くの人が多くの幸福を得る社会が理想=「各人は等しく一人として数えられ、誰もそれ以上に数えられてはならない」

C:☆J. S. ミル(John Stuart Mill、1806-73、イギリス)
○哲学者・政治学者。主著『経済学原理』『自由論』『功利主義』。
●「満足した豚よりも不満足な人間である方が、また満足した愚か者よりも不満足なソクラテスである方がよい(It is better to be a human dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.)」(『功利主義』)
⇒快楽には質的な差がある=計算できない精神的快楽を重視(⇒☆質的功利主義)
○利己的な本性を持つ人間の幸福最大化のため、☆制裁(sanction)が必要。
→☆内的制裁=人間の良心
●理想…イエスの黄金律「人にしてもらいたいと思うことを人にもしなさい」(ルカ6-31)
⇒利己心から離れ、良心からの感情(自分・他人の幸福を願う感情)を重視

▲他者危害の原則(harm-to-others principle)
「種あかしをすると、ミル『自由論』のなかに、「文明社会の成員に対し、彼の意志に反して正当に権力を行使しうる唯一の目的は、他人に対する危害の防止である。彼自身の利益は、身体的なものであれ精神的なものであれ、十分に正当化理由にならない」(岩波文庫では二四頁、世界の名誉では二二四頁下段)という言葉がある。この言葉が現代(一九八〇年代以降と言っていいだろう)では『他者危害の原則(harm-to-others principle)』と呼ばれる。」(加藤尚武[1994]『応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー、p. 9)

D:【補遺】実証主義、進化論
☆コント(Auguste Comte、1798-1857、フランス)…主著『実証哲学講義』。
├○社会学、☆実証主義を提唱…自然科学の手法で人間や社会を分析・考察
│=観察できる経験的事実のみが対象で、超経験的な存在(神、概念など)を認めない。
├●人間の知識は/棲愿段階→形而上学的段階→実証的段階と段階的に発展。
└☆社会有機体説:社会を生物のような有機体と見なし、それとの類比で社会を考察する。
☆スペンサー(Herbert Spencer、1820-1903、イギリス)…主著『総合哲学体系』
└☆ダーウィン(Charles Robert Darwin、1809-1882、イギリス、博物学者。主著『種の起源』)の☆進化論(…自然淘汰、適者生存)を社会に応用…☆社会進化論(社会ダーウィニズム)

▲◎20C 選好功利主義…ピーター=シンガー
 何か自分にとって善いと思うものを選ぶということは、自分を「善いと思うもの」に入れ込むことである。「最大多数の最大幸福」の原理は、「社会福祉をどれだけ行き届かせることができるか」を考えるための理論である(ただし、理論上、犠牲をもとめるものではない)。

【参考文献・参考URL】
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』、岩波ジュニア新書.
加藤尚武(1994)『応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー.
マイケル=サンデル著、鬼澤忍訳(2010)『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』、早川書房.
J. S. ミル著、塩尻公明・木村健康訳(1971)『自由論』、岩波文庫.
ピーター=シンガー著、山内友三郎・塚崎智訳(1991、1999新版)『実践の倫理』、昭和堂.
ピーター=シンガー著、山内友三郎訳(1995、1999新版)『私たちはどう生きるべきか』、法律文化社.
ピーター=シンガー著、戸田清訳(2002)『動物の解放』、技術と人間.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]29. 西洋近代思想(5)ヘーゲル

29. 西洋近代思想(5)ヘーゲル
【テーマ】カントとヘーゲルでは、道徳の捉え方がどう違うか?

☆ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel、1770-1831、ドイツ)
○ドイツ観念論の大成者。主著『精神現象学』『法の哲学(法哲学綱要)』『歴史哲学講義』。

A:自由
○カント…実践理性が立てた道徳法則への自律←ヘーゲルは「主観的」と批判
○ヘーゲル…現実の社会生活の中で主観的な道徳性と客観的な法との統一(=☆人倫)として実現

B:☆弁証法:事物全てに含まれる否定性をエネルギー・契機として、次の段階に移行し、やがて統一体へ遂げる運動。この運動の根源・原動力を☆「精神(Geist)」と呼ぶ。
●ヘーゲルの弁証法の図式
ぁ合(Synthese)→→→→→→(否定)→→→→→→反…(続く)…
  ↑
  └(☆止揚[Aufheben]:矛盾する立場の統一・統合)←┐
 正(These)→→→→→→(否定)→→→→→→◆反(Antithese)
○世界史…☆絶対精神(自由を本質とする絶対的で理性的な精神=世界理性=理念)の実現の過程=「世界史は自由の意識の進歩である」
▲絶対精神の段階
ー膣囘精神:(正)個人の心・意識。
客観的精神:(反)社会関係としての法や道徳、人倫。
絶対精神:(合)芸術・哲学・宗教に表れる。

C:☆人倫(Sittlichkeit):我々の社会の中で組織・制度となって実現しているもの。社会に現存する組織・制度のこと。
▲カントはSittlichkeitを「道徳性」と訳すが、ヘーゲルは人倫の中で人間の自由が実現されるもの、自由は目に見えるものと考えた。
●人倫の段階
_搬押А弊機飽情で結ばれた自然な共同体。人倫の基礎→子はやがて成長・独立し、社会の成員に。
∋毀閏匆顱А僻拭貌販した個人が互いの利害関係で契約し、自由に利益を追求=☆「欲望の体系」→富の蓄積や貧富の差→「人倫の喪失態」。
9餡函А聞隋某洋僂隆粟態。家族と市民社会を統一した最高の共同体⇒市民社会の不平等の克服=真の「自由」が実現。
⇒●「理性的なものは現実的なものであり、現実的なものは理性的である」(『法の哲学』)

【参考文献・参考URL】
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』、岩波ジュニア新書.
竹田青嗣、西研(2010)『超解読!はじめてのヘーゲル『精神現象学』』、講談社現代新書.
長谷川宏(1997)『新しいヘーゲル』、講談社現代新書.
ヘーゲル著、樫山欽四郎訳(1997)『精神現象学(上)』、平凡社ライブラリー.
ヘーゲル著、樫山欽四郎訳(1997)『精神現象学(下)』、平凡社ライブラリー.
ヘーゲル著、長谷川宏訳(1994)『歴史哲学講義(上)』、岩波文庫.
ヘーゲル著、長谷川宏訳(1994)『歴史哲学講義(下)』、岩波文庫.
ヘーゲル著、藤野渉・赤沢正敏訳(2001)『法の哲学〈1〉』、中公クラシックス.
ヘーゲル著、藤野渉・赤沢正敏訳(2001)『法の哲学〈2〉』、中公クラシックス.

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[高等学校公民科(倫理)][授業講義ノート]28. 西洋近代思想(4)カント

28. 西洋近代思想(4)カント
【テーマ】カントはなぜ「幸せになりたければ正直に働きなさい」のような定式を、道徳の原理としなかったのだろうか?

A:【確認】カントが考える理性と人間
┌理性┬理論理性(←経験的認識)…経験を通して自然法則(因果法則)を認識する。
│  └実践理性(←道徳的実践)…道徳法則を立てて意志に命令する。
└人間┬感性的存在…自然法則に支配される=欲望や感情に支配され、自由はない。
   └理性的存在…道徳法則に従う=自律としての自由を持つ。
▲「わが上なる星の輝く空と、わが内なる道徳法則」(『実践理性批判』)

B:☆道徳法則(実践理性の命令)の「形式」←形式主義
☆仮言命法(hypothetischer Imperativ):「もし…たいならば〜せよ」の形の条件つきの命令。⇒☆適法性(ただ法に従うだけ)=普遍性がなく、道徳法則になりえない。
  [例]お金を稼ぎたければ正直に行為せよ。
☆定言命法(kategorischer Imperativ):「ただ〜せよ」の形の無条件の命令。⇒道徳法則への尊敬(Achtung←注意を差し向けること)だけを動機に、自律的に従う(=☆義務)行為のみが道徳性を置く。
●「汝の意志の格率が常に同時に普遍的法則として妥当するように行為せよ(Handle so, dass der Wille durch seine Maxime sich selbst zugleich als allgemein gesetzgebend betrachten koenne.[GMS, BA 76/77 = Autonomieformel])」
└☆格率(Maxime):自分で決めた自身の行動方針。
⇒●道徳法則は具体的内容(行為の結果)に関わるのでなく、行為の動機を重視する=☆動機主義(動機説)←善意志
  [例]ただ正直に行為せよ。

C:☆人格(Person):道徳法則に自律的に従い行為する理性的主体←それ自体が「目的」で絶対的な価値を持つ。
●「汝の人格や他のあらゆる人格の内にある人間性を、常に同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ」
⇒●人間を「〜のため」(手段)ではなく、究極価値(目的)を持った存在として扱うべき=☆人格主義
☆目的の国:各人が互いの人格を目的として尊重する道徳的共同体。
└実現のため、☆永久平和(永遠平和)が不可欠(☆『永久(永遠)平和のために』)…世界連邦の実現などを提唱。

【参考文献・参考URL】
石川文康(1995)『カント入門』、ちくま新書.
イマヌエル=カント著、波多野精一・宮本和吉・篠田英雄訳(1979)『実践理性批判』、岩波文庫.
イマヌエル=カント著、篠田英雄訳(1976)『道徳系而上学原論』、岩波文庫.
▲次のものは値段が高いが、日本語訳がしっかりしている。…イマヌエル=カント著、宇都宮芳明訳(2004)『道徳形而上学の基礎づけ』、以文社.
▲「道徳系而上学原論」と「道徳形而上学の基礎づけ」は同じもの。Grundlegung zur Metaphysik der Sittenのタイトルの日本語訳。
イマヌエル=カント著、中山元訳(2006)『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』、光文社古典新訳文庫.
竹田青嗣(2010)『完全解読 カント『実践理性批判』』、講談社選書メチエ.
中島義道(1997)『カントの人間学』、講談社現代新書.
中島義道(2008)『カントの読み方』、ちくま新書.
フランソワ=ジュリアン著、中島隆博・志野好伸訳(2002)『道徳を基礎づける――孟子 vs. カント、ルソー、ニーチェ』、講談社現代新書.
マイケル=サンデル著、鬼澤忍訳(2010)『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』、早川書房.

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